古今第一の書家は中国・東晋時代の王羲之(おうぎし)である。その書を愛した唐の2代皇帝太宗(たいそう)は国をあげてその書跡を集め、鑑定、複製に力を注いだ。
当時すでに偽物が出回っていたらしく、虞世南(ぐせいなん)、魏徴(ぎちょう)、後には褚遂良(ちょすいりょう)が鑑定に当たった。王羲之の書跡であると鑑定されれば、文字の上に薄紙を重ねて輪郭を極細の筆で写し取る双鉤填墨(そうこうてんぼく)や、原本を見ながら書く臨書、石刻の拓本をとるなどの方法で複製を作らせた。
太宗は暇があればこれらを手本として学び、王羲之の人物も研究し、その書風の習得に励んだ。