2026年の春闘が大企業で本格化した。長引くインフレが暮らしを圧迫する中、物価上昇を超える賃上げで実質賃金がプラスに転じるかが焦点となる。
経済を成長軌道に乗せるには、賃上げの裾野を広げることが不可欠だ。春闘の先導役を期待される大企業の労使には、自社の待遇改善にとどまらず、取引先の中小企業が賃上げしやすい環境整備についても協議を深めてほしい。
経営側と労働組合の両トップは、安定的な賃上げが必要との考えで一致する。経団連は基本給を底上げするベースアップ(ベア)の検討を「賃金交渉の標準」と位置付け、ベアを前提とするよう呼びかけた。
労組の中央組織、連合は全体の賃上げ目標を3年連続で5%以上とし、中小企業の労組は6%以上に設定した。芳野友子会長は大企業と中小企業間の格差に加え、男女間格差の是正への取り組み強化を訴える。いずれも重要な視点である。
賃上げ率は23年から高水準で推移するものの、物価上昇には追いついていない。1人当たりの実質賃金は25年平均で前年を1・3%下回り、4年連続のマイナスとなった。多くの働き手は暮らしが上向いた実感を持てず、家計の厳しさが増しているのが現状だろう。
一方、上場企業の業績は総じて底堅い。トランプ米政権の高関税がマイナス要因となった産業はあるが、人工知能(AI)の需要増や円安ドル高基調により、半導体関連や自動車などは利益を伸ばしている。26年3月期に過去最高益を見込む企業は前期より増えそうだ。
加えて企業の内部留保は最高水準にある。利益をどの程度人件費に回しているかを示す労働分配率を見ると、大企業は低下傾向が続き、25年7~9月期は35・5%にとどまった。対して中小企業は過去25年間でほぼ70%を超える。
賃上げ余力のある大企業は多い。率先して給与への積極的な還元を求めたい。
中小企業の経営者からは「賃上げ疲れ」の訴えが相次ぐ。人材確保のために業績改善を伴わない賃上げに踏み切ったケースは少なくない。兵庫県内でも「取引先との価格交渉で原料高によるコスト増は転嫁できても労務費分はなかなか認めてもらえない」との声を聞く。
今年1月、下請法を改正した中小受託取引適正化法(取適法)が施行された。発注側の大企業が受注側の中小企業に対して取引価格を一方的に決めることなどを禁じた。発注側は法令順守を徹底し、適正な価格転嫁ができる環境を整えるべきだ。それが賃上げ定着の第一歩となる。























