来年1月に発表する、阪神・淡路大震災に絡むドキュメンタリー番組について打ち合わせる陵南中学校放送部=加古川市野口町水足
来年1月に発表する、阪神・淡路大震災に絡むドキュメンタリー番組について打ち合わせる陵南中学校放送部=加古川市野口町水足

 阪神・淡路大震災をテーマに、兵庫県加古川市立陵南中学校(野口町水足)放送部が制作したテレビ番組「30年目の私たちは」が、「『地方の時代』映像祭」(11月、大阪)の高校生(中学生)部門で奨励賞を受けた。来年1月17日で発生31年。生徒たちは「記憶をつなぐ」をテーマに新たな番組を制作中。「私たちは起きたことを知るべきだし、学んだことをいろんな人に知ってほしい」と願う。(中川 恵)

■避難所の課題描く

 受賞作は、避難所の最低限の設備を定める国際基準「スフィア基準」を手がかりに、多くの人を助けるためにできることは何かと考える内容。NHK杯全国中学校放送コンテスト県大会では最優秀賞を受けた。

 同映像祭に出品するにあたり、震災当時を知る教員や記憶のない教員らのインタビューを加えた。1年米田美槻さん(13)は「避難所で酒に酔った人が、泣く赤ちゃんに怒っていたと聞いて、避難所では助け合いだけでなく争いも起きるんだと実感した」と話す。受賞について、2年綛谷(かせたに)友唯部長(14)は「光栄だけど、(もう一つ上の)賞が取りたかった」と苦笑いする。

 現在、パナソニックホールディングスの映像制作を通じた学び支援プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース」のコンテストに向けて番組を制作している。内容を話し合う中で、1年竹内佑月さん(13)が有馬温泉(神戸市)の取材を提案。顧問の宮本崇志教諭(40)から、震災直後に同温泉が炊き出しなどの支援を行っていたと聞き、再び震災を取り上げることに決まった。

 年明けには、生徒会と一緒に神戸・三宮の東遊園地を訪れ、ガス灯「1・17希望の灯」の分灯を取材する。生徒たちは「当時の様子や教訓を聞くことで、次の災害への備えや解決策を提示したい」としている。

■顧問の宮本教諭は震災時小4 薄らぐ記憶に危機感覚え

 1995年の震災当時、洲本第一小(洲本市)の4年生だった陵南中放送部顧問の宮本崇志教諭(40)。東日本大震災のあった2011年に県教委に採用され、赴任校で被災体験を語り、防災教育に力を注ぐ。

 1月17日の朝。「小学校の運動場が割れていた。これが大地震かと思った」。帰り道、崩れた町を1人歩くと、心細くて怖かった。1人で留守番ができなくなり、親しい人から離れる時などに起こる「分離不安」に悩まされた。父は兼業農家だったが、震災で会社が倒産、収入が安定しなくなった。

 国語教員となり、淡路島内で講師を務め、県教委に採用されると、加古川市立中部中学校に赴任。阪神・淡路の記憶が薄らいでいるように感じ、体験を語るようになった。「僕が喋らなければ」という思いは、陵南中に異動しても変わらない。

 災害前にやっておくべきことは? 体育館が避難所になったときの課題は?

 生徒に問いかけて考えさせる。顧問を務める放送部では、生徒が防災や社会的弱者の避難などに興味を持ち、番組を制作した。

 「揺れは一瞬でも、トラウマ(心的外傷)は、その後も続く。生徒が過去の災害を知ることで、自分の命を守り、回りの人の支えになれたら」