「民謡からは地域の情景が浮かんでくる。古里の良さを歌を通じ伝えたい」と力を込めるのは、「日本民謡アーティスト」を名乗るSeimaさん=丹波篠山市河原町。漢字では「勢真」で、本名は小林真弓。8歳から、日本民謡・民舞兵庫県連合会理事の山口勢旭(せいぎょく)さんに師事し、民謡や津軽三味線の腕を磨いてきた。天へと届くような伸びやかな声で、地元の「デカンショ節」や「津軽あいや節」など、各地の民謡を歌い上げる。
身長155センチと小柄ながら声量抜群でこぶしを効かす。よく通る声や音量に、「そんな細いのによう出るねえ」と驚かれることも少なくないとか。「声が良く、リズム感も良い。努力家」と師匠・山口さんは弟子を評する。
篠山城下町の出身。篠山産業高を卒業後、丹波篠山市職員に。市内で収録された番組「NHKのど自慢」でチャンピオンに選ばれ、地域の催しで引っ張りだことなった。
伝統ある全国コンクール「産経民謡大賞」の出場経験もあり、昨春、市役所を辞め、民謡歌手として独立した。これまで市によるプロ野球の協賛試合「黒豆ナイター」で、スタジアムの大観衆を前に、歌と演奏を披露したことも。
交流サイト(SNS)では自らが歌う動画を公開。「いつか海外進出したい」と夢見る。今春には、丹波篠山市と同じく「ユネスコ創造都市ネットワーク」に加盟するタイのスパンブリー県に招かれ、国際音楽祭に出演した。日本語の通じない現地でも「デカンショ節」の歌と踊りは好評で「音楽は国境を越えると実感した」。
一方で「何度練習してもゴールはない。デカンショ節もこれで完璧と思えたことはない」と語る。師匠には一つの曲について「最低でも500回は稽古せなあかん」と教えられた。「日々勉強。これからも技術を磨き頑張りたい」
実はもう一つの顔も。風呂桶(ふろおけ)をラケット代わりにピンポン球を打ち合う、丹波篠山発祥のスポーツ「桶ット卓球」の実力者だ。昨年の全国大会では男女ペア部門で優勝した。
コンビ名は「お弓と喜蔵(よしぞう)」。赤い忍び装束を身にまとい、「くノ一」姿で粘り強くプレーする。相方・喜蔵さんも忍者姿。2人でテレビにも出た。「負けると悔しいけど、桶ットには勝敗を超えた楽しさがある。ユルさも魅力」と笑う。来年2月の第2回世界大会にも出場予定。「目指すは世界王者」とこぶしを握る。(堀井正純)