加西市が再生可能エネルギー(再エネ)を活用した脱炭素化に取り組んでいる。市内の遊休地やため池に太陽光パネルを設置し、生まれた電力を公共施設などに送る「エネルギーの地産地消」を図る。市は民間事業者らと協定を結び、2024年12月に地域エネルギー会社「かさいスマートエナジー」を設立。今月末から太陽光パネルによる発電を始める計画だ。「脱炭素先行地域」として、未来図を模索している。(村上晃宏)
し尿処理を担う加西衛生センター(同市鎮岩町)の西側。木々に囲まれた敷地(約6千平方メートル)に巨大な太陽光パネルがずらりと並ぶ。
年間の発電量は約75万キロワット時。3人家族約170世帯を1年間賄える規模だ。今月から稼働予定で、関西電力送配電(大阪市)の設備に乗せて公共施設などの電力として活用する。
元々は地域の憩いの場として整備されていたが、近年は使われる頻度も少なく、遊休地として持て余していた。パネル設置の際は周囲の桜などの樹木はあまり伐採せずに工事したという。
□ □
国は50年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」実現に向け、30年度までに脱炭素化に取り組む「先行地域」を選定している。
加西市は21年にゼロカーボンシティ宣言をし、30年度までに13年度比で市内の温室効果ガス排出量を53%削減する目標を立てた。
22年に「再生可能エネルギーを活用したエネルギーの地産地消による脱炭素化案」が環境省に認められ、市が先行地域に選ばれた。市は小売電気事業者「シン・エナジー」(神戸市)や但陽信用金庫(加古川市)と協定を結び、株式会社「かさいスマートエナジー」を設立。また、車載用電池メーカー「プライムプラネットエナジー&ソリューションズ」(PPES、東京都)などと事業協定を締結した。
□ □
かさいスマートエナジーは電気の小売りや再エネ電源開発、車載用蓄電池を活用した事業などに取り組む。資本金は8千万円で、市が最も多い4割の株を持つ。
市がこだわったのは「エネルギーの地産地消」だ。市内にはものづくりを中心に多くの事業所があるが、市総生産のうち約1・8%に当たる約43億円が電気代として市外の電力会社に「流出」していた。エネルギーの自給自足を目指すことで、地域内の経済循環や利益還元を図ることも目的だ。
今後、ため池2カ所に太陽光パネルを設置し、26年春から稼働する予定という。ため池は事前に環境調査をした上で選定し、パネルの設置面積が半分以下になるよう環境や美観に配慮する。市内のため池で別の民間企業がパネルを設置している場所もあるが、現時点で環境被害は出ていないという。
□ □
他にも市役所周辺と同市九会地区の2カ所で計画案を練っている。市役所では駐車場にカーポートを設けた上で太陽光パネルを整備し、送電線を張って電気を賄う。災害時に外部から電力供給を受けられなくなった場合でも自家発電できるため、補完的な対応ができるという。
市南東部の九会地区は、ため池に太陽光発電設備を整備し、近くの公民館や学校給食センター、平和学習施設「soraかさい」などに供給する。日中は蓄電池に余剰分を充電し、太陽光発電ができない夜間は蓄電池から供給する構想だ。九会地区は27年度、市役所は28年度から電力供給を始めるという。
かさいスマートエナジーの植田浩司取締役(67)は「『蓄電池を使った脱炭素のまち加西』を実現するため、地道に努力を重ねていきたい」と話した。
























