ドローンで高度約150メートルから眺めると、住宅街の中に、巨大な鍵穴のような古墳がくっきり浮かび上がった。明石海峡大橋や淡路島が一望できる丘陵。古代と現代が混在する、時空を超えたかのような不思議な光景が広がる。
4世紀後半に造られたとされる、神戸市垂水区の五色塚古墳(国指定史跡)は8月、復元・整備されてから半世紀を迎えた。兵庫県内最大の前方後円墳で、全長194メートル。墳丘は葺石や埴輪で彩られ、築造当時の威容をうかがい知ることができる。
これまで円筒の埴輪などは多数出土したが、埋葬施設の石室は未調査のため、詳しい埋葬者については今なお、謎に包まれたままだ。明石海峡や周辺を支配していた、大和政権とも関係がある豪族の墓と考えられている。
地元住民らによるNPO法人が除草などの維持管理に努めており、外観は年月を感じさせないほど美しい。近所の人たちが散歩に訪れたり、すぐそばを電車が走ったり。大型古墳は令和の暮らしにすっかり溶け込んでいる。(斎藤雅志、笠原次郎)