民間人に売却された西脇組の事務所=5月19日、神戸市西区玉津町上池
民間人に売却された西脇組の事務所=5月19日、神戸市西区玉津町上池

 特定抗争指定暴力団神戸山口組の傘下団体・西脇組の事務所(神戸市西区玉津町上池)が、尼崎市で不動産事業を営む個人に売却されたことが分かった。売買は5月13日付。事務所では特定抗争指定暴力団山口組との分裂に伴う抗争事件も起き、地域住民から追放運動が起きていた。

 登記簿によると、事務所は鉄骨3階建て(延べ約250平方メートル)で、1987年に建築された。組の関係者が売却の意向を示していたという。

 西脇組は70年代に山口組の2次団体となり、神戸市西区で長年活動。2015年の分裂後は神戸山口組に所属し、事務所では神戸側の会合や行事が開かれていた。20年1月に「特定抗争指定」を受けてからは使用が禁じられ、組員も立ち入れなくなっている。

 しかし23年7月、山口組系組員の運転するトラックが門柱に突っ込む事件が発生。県道沿いの住宅街に建ち、付近には児童館や保育所、通学路もあるため、住民らが同年12月から追放運動を展開していた。

 住民の委託を受けた暴力団追放兵庫県民センターが訴訟を起こし、24年9月に神戸地裁が事務所の使用を差し止める仮処分を決定したため、仮に抗争が終わって特定抗争指定が解除されても、事務所は使えない状況となっていた。

 県警によると分裂以降、県内の暴力団施設が撤去されるのは32カ所目。捜査関係者によると、県警は売買に際し、暴力団対策法や県暴力団排除条例への違反がないか確認した。

 西脇組を巡っては、02年に傘下組織の組長らが大学院生に集団で暴行して殺害する事件が起き、県警は当時、特別集中取締本部を設けて弱体化を図った。捜査関係者は「地域との協力が実った。古参組織の拠点がなくなり、市民の安全にとって大きな意義がある」と話した。