吉岡君江さんが寄贈したあすなろの木。校庭の一角ですくすく成長している=神戸市東灘区本山南町4、福池小学校(撮影・風斗雅博)
吉岡君江さんが寄贈したあすなろの木。校庭の一角ですくすく成長している=神戸市東灘区本山南町4、福池小学校(撮影・風斗雅博)

 阪神・淡路大震災で、小学校の先生だった長男眞治さん=当時(29)=と妻の千恵美さん=当時(26)=を亡くした吉岡君江さん(82)=神戸市北区=は、2人が生きた証しを残したいと考える。震災から16年が過ぎていた。

 眞治さんが前身校で教えていた神戸市立夢野の丘小学校(兵庫区)には、震災当時の校長だった大崎謙介さん(故人)が協力してくれ、すんなりとあすなろの木の苗木を寄贈できた。大崎さんは震災の翌年に夫の勇治さんまで病気で亡くした君江さんのことを、何かと気にかけ続けた人だ。君江さんの思いを知るや、すぐに働きかけてくれた。

 けれど、千恵美さんが勤務した福池小(東灘区)にはつてがなく、時間が過ぎていく。

 ようやく2年後、大崎さんと旧知の仲の三善公文(ひろふみ)さん(64)が福池小の校長に就いたことで事態が動く。