六甲山牧場の敷地内に仕掛けたイノシシ用のくくりわなにかかったシカ=2021年5月30日、神戸市灘区六甲山町(兵庫県猟友会摩耶支部提供)
六甲山牧場の敷地内に仕掛けたイノシシ用のくくりわなにかかったシカ=2021年5月30日、神戸市灘区六甲山町(兵庫県猟友会摩耶支部提供)

 ニホンジカの生息域が兵庫県北部などから拡大し、神戸・阪神間の六甲山地に迫っている。いったん定着すると増加は速いとされ、森の植生を数年で変えてしまう恐れがあるため、神戸市はセンサーカメラ150台を投入するなど監視強化に乗り出した。目撃情報や生息の痕跡はすでにあり、専門家は「六甲山は観光客も多く、捕獲などの対策が難しい。定着を阻止できるか、今が勝負」と指摘する。

 「六甲山にはもうシカが入っている」。そう証言するのは、県猟友会摩耶支部の寺口和彦支部長(77)。2021年5月、神戸市の求めで六甲山牧場内に設置したイノシシ用のわなにシカがかかった。体重70キロほどの雄。当時はシカの捕獲許可を取っておらず、放すしかなかったという。

 22年5月には、神戸市灘区の市街地に雄1頭が現れ、捕獲される騒ぎがあった。六甲山を通り抜けたと考えられている。同年秋には山上で足跡が見つかり、23年以降も目撃されたり、定点カメラで撮影されたりしている。

但馬、西播中心に被害額1・5億円

 シカの定着で危惧されるのは旺盛な食欲による食害だ。兵庫県によると、県内のシカ生息数は15万頭(22年度末推計)を超え、農林業の被害額は但馬、西播地域を中心に計1・5億円。年間4万3千頭を捕獲するなど対策を強化するものの、分布は拡大を続ける。