空軍の訓練が日本メディアに公開された。中国との緊張が高まり、緊急発進が増えているという=台中市の清泉崗空軍基地
空軍の訓練が日本メディアに公開された。中国との緊張が高まり、緊急発進が増えているという=台中市の清泉崗空軍基地

 台湾滞在中、空軍基地を取材する機会を得た。中国軍機が台中間の「休戦ライン」を越えて頻繁に飛来し、台湾側の緊急発進(スクランブル)が増えている。習近平中国国家主席は台湾への強硬な姿勢を崩していない。国防の最前線にいる台湾の空軍パイロットは、危機の高まりをどう見ているのか。(論説委員・小林由佳)

 台湾中西部、台中市の清泉崗空軍基地。国防部(国防省)が日本メディアに訓練を公開した。耳をつんざく爆音をとどろかせ、戦闘機が次々と飛び立つ。機影はあっという間に見えなくなった。

 軍歴15年のパイロット鐘仁富中佐(39)が取材に応じた。中国が軍事的圧力を強めている現状をどう見るかと質問すると、こちらの緊張を和らげるように笑顔を見せた。「ここ2、3年は緊急発進(スクランブル)の命令を受けることが多くなりましたが、しっかり準備しているし、慣れています。重要なのは相手を挑発しないことです」

 パイロットたちは2交代制で24時間待機し、指令が出れば5分以内に発進する。なぜ空軍に入隊を?と聞かれた鐘中佐は「親戚に軍人がいて、子どものころから憧れていました。幼いなりに国を守らなくてはという気持ちがあったかもしれません」と答えた。