台湾では2024年1月に総統選が行われる。「中国とどう向き合うか」は主要争点の一つだ。一方、中国が選挙に介入しているとのうわさが絶えない。フェイクニュースを流して親中派の候補者に有利な状況をつくろうとしている、とも指摘される。偽情報に対抗しようと、台湾市民が動き出した。(論説委員・小林由佳)
「どうぞ、入って入って!」
台湾・台北市の大通りを歩いていたら、鮮やかな緑のベストを着た女性に声をかけられた。手招きされるままにビルの1階に入ると、熱弁を振るう男性の映像が巨大スクリーンに映し出されていた。壁には「競選総部」の文字。そこは、台湾の政権与党・民主進歩党(民進党)の選挙事務所だった。緑を党のシンボルカラーとしている。
現地を訪れたのは11月。国のトップを決める4年に1度の総統選を2024年1月13日に控え、選挙ムードが高まりつつあった。街頭の看板はどれもビッグサイズだ。路線バスを候補者の顔写真で丸ごとくるんだ「動くポスター」が頻繁に行き交っていた。
現職の蔡英文総統は間もなく2期目を終える。民進党から後継として立候補したのは、頼清徳・副総統。選挙事務所の映像に登場していた、その人である。蔡総統と同じく、米国との関係を重視し、中国の圧力に対抗する姿勢を見せる。中国政府は台湾独立派とみなして目の敵にしている。