1997年に兵庫県稲美町で起きた集団暴行事件で、高校1年だった長男を亡くした高松由美子さん(68)=同町=が29日、同県宍粟市山崎町鹿沢の宍粟防災センターで講演した。永遠に続く遺族の苦しみを訴えたほか、法をつかさどる裁判所が長男の事件記録を廃棄していたことに「まるで『法律』から殺されたようだ」と心情を吐露した。
同市が開く「人権文化をすすめる学習会」の一環。高松さんは「終着駅のないレールを走り…」と題して話した。
高松さんの長男聡至(さとし)さん=当時(15)=は97年8月23日、自宅近くの神社で中学の同級生ら少年10人から暴行を受け、9月1日に亡くなった。
聡至さんが亡くなった後、高松さんは料理も外出もできず、暗闇の中をさまよう生活を送った。「家族の未来も生きる気力も奪われる。これが犯罪の恐ろしさ」と説明し「被害者や遺族が孤立せず、普通の生活ができるよう地域でも見守ってほしい」と呼びかけた。
長男の事件を含め、全国の家裁で重大少年事件の記録廃棄が相次いでいることに「ショックだった。どこかで(記録を)読めるだろうと思っていたのに…。加害者の更生のためにも事件記録は必要ではないか」と訴えた。(村上晃宏)