有馬温泉には、今日も多くの外国人旅行者が訪れています。その中には、単なる観光目的ではなく、日本との歴史的・文化的な関わりを感じながら訪れる方々もいます。
例えば、16世紀に来日したポルトガル出身のイエズス会宣教師、ルイス・フロイス(1532~97年)は、日本との深い関係を築いた人物の一人です。
彼は織田信長と親交を結び、その庇護(ひご)のもとでキリスト教の布教活動に従事しました。著作「日本史」には、戦国時代の日本の風俗や出来事が詳細に記されており、西洋から見た日本像を知る上で貴重な歴史資料となっています。
そのフロイスを研究しているポルトガル人の女性造園設計士が一昨年、有馬を訪れた際、「天正遣欧少年使節がリスボンを訪れてから440年となる2025年に、記念のイベントを開催する予定があり、何か良い企画はないだろうか?」と相談を受けました。
天正遣欧少年使節とは、1582年から90年にかけて日本から欧州に派遣された4人の少年たち(伊東マンショ、千々石ミゲル、原マルチノ、中浦ジュリアン)のことです。
彼らはメスキータ神父とともに旅をし、活版印刷技術や西洋音楽など、多くの文化を日本に持ち帰りました。帰国後には、有馬とゆかりが深い豊臣秀吉を前に、「聚楽第(じゅらくだい)」で演奏を行い、秀吉がその音楽に深く感動し、3度もアンコールを求めたという逸話も残されています。
天正遣欧少年使節とのつながりでは、新型コロナウイルス下、世界的指揮者の西本智実さんから連絡があり、有馬でその当時の楽器と楽曲を再現し、演奏してもらう機会がありました。
そこで、先のポルトガル人女性に西本さんを紹介したところ、話が進み、今年7月16日、ポルトガル・リスボンのオリエント博物館で、特別コンサートが開催されることになりました。(興味のある方は有馬温泉観光協会まで)
このコンサートは、天正遣欧少年使節とメスキータ神父による文化交流をテーマに西本さんの指揮のもと、6人の奏者によって演奏されます。
演目は16世紀ルネサンス期の音楽が中心で、当時のオリジナル楽器を用いた本格的な内容となる予定です。西本さんとポルトガル人女性から「来るでしょう?」と声をかけてもらったので、有馬温泉観光協会の有志でコンサートに参加し、リスボンで観光プロモーションを行うことにしました。
有馬は歴史を通じて国内外のさまざまな方々と深い関係を築いてきた場所です。これからもそうしたご縁を大切にしながら、持続可能な国際温泉リゾート地を目指したいと考えています。(有馬温泉観光協会)