①花の蜜を吸うベニシジミ
①花の蜜を吸うベニシジミ

 チョウやハチが花に来る姿は、野山だけでなく庭先でもよく見かける風景です。こうした昆虫(写真①)は花で主に蜜や花粉を食べる、つまり食事に来ているのです。植物にとっても大きなメリットがあり、昆虫の体に花粉を付着させて、花粉を運んでもらっています。花粉を昆虫に運んでもらえないと、多くの植物は種子を付けることができないわけですから、花に来る昆虫は植物にとっても大事な存在です。

 こうした昆虫たちは農作物生産にも欠かせません。野生のハナバチ類による農作物生産だけに注目しても、日本全国で年間3300億円もの経済効果を持っていると推定されています。もちろん、チョウやハナバチだけでなく、ガやハナムグリ、ハナアブなども植物の受粉に貢献していて、これらを含めるとさらに大きな経済効果と予想されています。

 しかし、こうした花に来る昆虫の減少は現在、世界的に深刻な問題となっています。日本でも、調査したチョウ類のうち3分の1の種類が、過去20年近くで大幅に減少したことが報告されていますし、アメリカでも過去20年間でチョウ類の22%が減少したことが報告されています。

 チョウ以外の昆虫では国内の報告が少ないものの、その多くが減少傾向にあるとされています。昆虫が減少した要因としては、土地開発などにより巣を作る場所の減少、餌資源となる花の減少のほか、最近は気候変動によって、昆虫の発生時期と開花期がずれてしまうことなども指摘されています。

 それでは、こうした花に来る昆虫を守るために何ができるでしょうか? その一つが、花に来る昆虫に優しい庭やビオトープづくりです。まず昆虫の餌として花が必要になります。この時、どの季節でも何かの花が咲いているようにすること、地元の在来植物を用いること、農薬や殺虫剤を使わないことが理想的です(こうしてみるとなかなか難しいですが…)。

 また、木箱にたくさんの竹筒や葦簀(よしず)の束を入れておくビーホテル(写真②)を設置しておくと、ハナバチやドロバチなどが巣を作ってくれます。これらが成功すると、チョウやハナバチがやってきてくれるようになります。

 ハナバチの多くは毒針を持っておりますが、手づかみするなど、よほど強い刺激をしなければ、刺されることはまずありません。実際、昆虫に優しい庭づくりはヨーロッパではとても人気があります。皆さんも、昆虫に優しい庭づくりにチャレンジしてみませんか?