結婚なんてしなければ良かった。若い頃は好きな人となら、どんな困難も乗り越えられると思っていたのに…。さまざまな夫婦の実話を紹介するシリーズ「離婚」。今回は「借金する夫と毒姑(どくしゅうとめ)」(全4回中の第1回)。妊娠して学生結婚し、お金にルーズな夫と、世間体ばかりを気にする義母に苦しめられた女性の体験を紹介する。(斉藤正志)
■夫は会社をやめさせられた
「私はオープンに生きている。隠すようなことはない」
兵庫県阪神地域で暮らす佐奈さん(55)=仮名=は話した。
若くして結婚、妊娠し、生活は窮乏。夫は就職してから借金を重ね、会社を辞めさせられた。
義父は有名企業の重役。
義母は世間体を過剰に気にして、佐奈さん夫婦の子育てにも自分勝手に介入してきた。
「うちの家系からばかは出せません」と勝手なことを言われ、何度も衝突した。
佐奈さんの取材に対する明るい口調とは裏腹に、明かしてくれたのは苦難の人生だった。
苦しい生活の中で、佐奈さんは気丈に振る舞っていたが、精神的に追い詰められることもあったという。
そんな時はサウナに行き、汗まみれで、誰にもばれないように一人で泣いた。
元夫と結婚するきっかけとなったのは1990年。元夫はまだ大学生だった。(以下敬称略)
■同級生と偶然の再会、21歳で妊娠
佐奈と孝夫=仮名=は、もともと同じ中学校の同級生だった。
90年、二十歳の佐奈は准看護師の資格を取ったばかりで、地元の医療機関で働いていた。
孝夫は中部地方の大学4年生。帰省していた際に事故に遭い、医療機関を受診した。
そこで働いていた佐奈と、偶然再会した。
孝夫のけがは軽く、佐奈は「どっかご飯でも行こう」と誘われた。
慣れない仕事で精いっぱいの生活を送っていた佐奈にとって、自由で爽やかな大学生はまぶしかった。
付き合うようになり、佐奈はおなかに子どもを宿した。
二人とも21歳だった。
■義母は出産に猛反対
義母は出産に猛反対した。
佐奈は公営住宅で育ち、家庭は決して裕福ではなかった。
義母は夫が有名企業の重役であることを誇りに思い、佐奈を毛嫌いした。
籍を入れることにも反対した。
孝夫と佐奈はそれを押し切って結婚した。
孝夫は卒業まで大学に通い、佐奈は1Kの下宿先で一緒に暮らした。
義父母からの仕送りだけに頼る生活は、苦しかった。
スーパーで数十円のコロッケを一つ買うのも迷った。
切迫早産の危険性があるため入院し、91年秋、女の子を出産した。
小さな命の誕生に、孝夫と共に笑みをこぼした。
この時は、どんな壁にぶつかっても、孝夫となら乗り越えられると思っていた。
孝夫のだらしなく、頼りない人間性に、気付いていなかった。
そしてそのことが、義母の過剰な干渉を招くことになる。(敬称略)
=続く=
<借金する夫と毒姑>② 夫が事実上の解雇 消費者金融に借金200万円 生活費にも困る日々
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シリーズ「離婚」は、神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」の一環で、LINE(ライン)を通じたアンケートの回答者に取材しました。