熟年離婚について書かれた本

熟年離婚について書かれた本

 離婚総数に占める熟年離婚の割合が高まっている。厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の同居20年以上の離婚は約3万9千件に上り、全体(同居期間不詳を除く)の23・5%と過去最高になった。4組に1組が熟年夫婦となる。高齢化や女性の社会進出などが要因とみられる。離婚回避のために、専門家は「年齢を重ねてからこそ、相手が『自分を大切にしてもらっている』と感じられる言動が必要」と指摘する。(斉藤正志)

 ■6割が「離婚したいと思ったことがある」

 同居20年以上の熟年離婚は、団塊の世代が50代を迎えた1990年代後半ごろから急増し、ピークの2002年には約4万6千件に上った。

 その後、離婚総数は減少傾向にあるが、熟年離婚は高止まりが続く。

 22年の離婚総数は約17万9千件で、ピークだった02年から38・2%減った。熟年離婚は約3万9千件で、同14・4%減にとどまる。

 神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」では、昨年9月にLINE(ライン)を通じた結婚・離婚についてのアンケートを実施。結婚20年を超える314人のうち、離婚したいと思ったことがある人が計188人(59・9%)に上った。

 ■離婚理由の1位は

 離婚したいと思ったことがある人の内訳は、何度かある=110人(35・0%)▽しょっちゅうある=33人(10・5%)▽1度だけある=24人(7・6%)▽いつも思っている=21人(6・7%)-だった。

 離婚したいと思った理由(複数回答可)では、「性格・価値観の不一致」が58・5%で最多。「相手の親族(義父母ら)との関係」「モラルハラスメント(暴言、威圧的な態度、束縛など)」がいずれも23・9%で続いた。

 次いで「子どもの問題(子育てに協力しない、教育方針の不一致など)」が16・0%、「性の問題(セックスレスなど)」が14・9%だった。

 ■「子どもにDV」「多額の借金」

 アンケートでは、熟年離婚・別居に至る苦しい体験がつづられた。

 「残りの人生を共有して行くことが、想像できなくなった。経済感覚や子育て、家事への考え方の違いがあり、父親としての自覚が欠如していた。結婚当初から、しゅうとめに『嫁の代わりはおる』と言われていたので、いつかはそうしてもいいと思っていた」(播磨地域の50代女性)

 「金銭感覚に問題があった。3度目の多額の借金が発覚したタイミングで離婚を切り出した」(神戸市の60代女性)

 「DV(家庭内暴力)は子どもにもおよび、束縛も激しく、生活費ももらえなかった。買い物のレシート、車のメーターのチェックなどがんじがらめだった」(但馬地域の70代女性)

 「小さなことの積み重ねで別居した。共働きなのに4人の子育てに非協力的だった。私の親の葬式の時、ワイシャツが黄ばんでいるからと私に買いに行かせた優しさのない男だった」(神戸市の50代女性)

 ■夫婦二人の生活が長期化

 夫婦問題研究家で離婚カウンセラーの岡野あつこさんによると、高齢化や女性の社会進出が、熟年離婚件数が高止まりしている背景にあるとみられる。

 共働き世帯が増え、女性が多様な価値観に触れる機会が増加。経済力ある女性も増え、離婚に踏み切りやすい環境があるという。

 高齢化が進んだことで、夫が定年退職した後、夫婦での生活も長期化している。子どもが巣立った後、二人だけの生活に不安を感じる人が多いという。

 岡野さんは「かつて妻は夫に嫌気が差しても、夫が亡くなるまで耐えていたが、長生きするので我慢できなくなっている」と指摘する。

 また近年の離婚についての相談者は、女性だけでなく男性も増えた。浮気をせず、借金もない真面目な人が多いという。

 「自分は一生懸命に働いてきたのに、妻は何もしていない、自分を大切にしてくれないと感じる男性が増えてきた」

離婚カウンセラーの岡野あつこさん(提供)

 ■「言わなくても分かるだろう」は駄目

 熟年離婚を回避するためには、感謝することやねぎらうこと、ほめることなど、「自分を大切に思ってくれている」と相手に感じてもらうことが重要という。

 岡野さんは「『言わなくても分かるだろう』というのは駄目。『ありがとう』などの言葉を日常的に口にし、あいさつなどの人として当たり前のことをきちんとするだけで、夫婦関係は変わる」と話した。

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 続きの「不倫、ワンオペ育児、借金…離婚の理由さまざまに 夫婦の在り方アンケート」では、離婚に踏み切った人たちのそれぞれの事情と胸中を紹介します。

不倫、ワンオペ育児、借金…離婚の理由さまざまに 夫婦の在り方アンケート㊤

離婚を思いとどまった理由は? 夫婦の在り方アンケート㊦

関係を劇的に改善させる言葉 <熟年夫婦の過ごし方>①

便座を下げないが離婚原因に 言ってはいけないNGワード <熟年夫婦の過ごし方>②