なぜ結婚したのか…。幸せな未来を思い描いていたのに、一緒に暮らすと後悔ばかり。人口動態統計によると、2023年には約18万4千組が離婚した。約3分に1組が別れている計算になる。シリーズ「離婚」では、さまざまな夫婦の実話を紹介する。今回は「暴力夫は練炭自殺を図った」(全8回)。壮絶な暴力やモラルハラスメントを受け、7年たってようやく離婚できた女性の体験談をつづる。(斉藤正志)
■首を絞められ、服をずたずたに
元夫のDV(家庭内暴力)、暴言、嫉妬、苛烈なモラハラ、傍観するだけの義父母…。
兵庫県内の小さなまちに住む洋子さん(49)=仮名=が、離婚に至った経緯を話してくれた。
DVは壮絶だった。
髪の毛をつかんで振り回され、あざができるまで首を絞められた。服をずたずたに破られることもあった。
幼いわが子が、暴力を振るわれる母親を目の当たりにし、ショックで気を失ったこともあった。
自宅を逃げ出し、離婚調停に入ると、夫は練炭自殺を図り、意識が戻らない状態になった。
洋子さんに取材にすると、苦しかった日々が、あふれるように口をついた。
元夫との出会いは、05年までさかのぼるという。(以下敬称略)
■交際の申し込み、熱意に負けた
洋子と秀男=仮名=は、もともと会社の同僚だった。
洋子は当時30歳。秀男の二つ年上だった。
同じ部署ではなかったが、洋子に秀男からいきなり電話があり、「交際してほしい」と言われた。
連絡先を教えた覚えはなく、後に会社の連絡網を盗み見られたことを知る。
洋子は離婚歴があり、先夫との間に幼い男の子がいた。
さらに父親が末期がんで、余命がいくばくも無いと宣告されていた。
好意を持ってくれることに悪い気はしなかったが、誰かと付き合う気には、とてもなれなかった。
「今は考えられない」
洋子は秀男に伝えたが、秀男は諦めなかった。
何度も電話があり、納得できないと家まで来ようとした。
小さな地方のまちなので、自宅の場所は知られていた。
洋子は熱意に負けて交際を承諾した。
■「別れるなら自殺する」
付き合いだすと、秀男の束縛はひどかった。
連絡が取れない時間帯があると、「○時○分にどこで何しとったんや」と、洋子の行動を細かくチェックしようとする。
風呂に入っていてメールの返信が遅くなれば、「誰かと付き合っているんやないんか」と強い口調で疑われた。
入浴していたことを説明しても、信用してくれなかった。
洋子が「別れたい」と切り出すと、「別れるなら自殺する」と言われ、別れられなかった。
ずるずると関係が続いた。
「一緒にいられないから、腹が立ってしまうんや。結婚してくれたら気持ちが落ち着く」
そう言われた。
洋子は、その言葉を信じてしまった。
後になって洋子は、この時の決断を、激しく後悔することになる。(敬称略)
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シリーズ「離婚」は、神戸新聞の双方向型報道「スクープラボ」の一環で、LINE(ライン)を通じたアンケートの回答者に取材しました。