パーキンソン病と向き合いながら、子育てや仕事、マラソンに奮闘する川下史博さん=西宮市内

パーキンソン病と向き合いながら、子育てや仕事、マラソンに奮闘する川下史博さん=西宮市内

■妻や周囲の優しさが支え

 体の震えやこわばりなどが出る指定難病のパーキンソン病。50歳以上でかかることが多い病気ですが、まれに30代や40代の若さで発症する人がいます。建築・デザイン業界で働く自営業の川下史博さん(51)=西宮市=もその一人。ゆっくり進行する病気と向き合いながら、仕事や子育て、マラソンに奮闘する川下さんに話を聞きました。

 -症状について教えてください。

 「僕の場合、今出ている振戦(震え)です。ちょっと今、薬があまり効いていなくて。ポーカーフェイスになっていても、別に取材が嫌だと思っているわけではないです(笑)。もう一つは動作を起こす時の『動きにくさ』。動き出しを迷ってしまう感じなんです。運動以外でも、マルチタスクが昔より難しくなりました」

 -診断のきっかけは。

 「スマートフォンの動画に映る自分の動きが少し遅かったり、震えていたりして、なんかおかしいなと思い始めたのが7年ほど前です。亡くなった母親がパーキンソン病だったこともあり、病院に行ったら診断を受けました。驚きはなかったし、そこまで悲観する気持ちもなくて。まあ、頑張って付き合っていくかと」

 -結構前向きですね。

 「まだ若いからこそできることもあると思うんです。診断されてから健康目的でマラソンを始め、今は毎朝8キロくらい走ります。最近はタイムがどんどん遅くなっているけど、3月の東京マラソンも完走できた。高齢になってからの発症だったらマラソンはしなかっただろうし、走っていなかったら不摂生で他の病気になっていたかも」

 -一方で若いがゆえの悩みもありますか。

 「若い患者の悩みは仕事と子育てです。私の下の娘がもうすぐ2歳。この病気は進行性で、おむつを替えるのが難しくなったり、追いかけっこもできなくなったりしていく。仕事では、打ち合わせの時に震えが止まらなくなり、パニックみたいになったことがあります。以前できたことができなくなるのは、やっぱりいらだちがありますね」

 -支えは何ですか。

 「妻の存在は大きくて、ありがたい。気持ちや状況が整理できない時、一人でいたら考えがぐるぐると同じところを回ってしまうけれど、妻は『考えてもしょうがないから、一緒に生きるだけだよね』と言ってくれる。それで『そうか。一人で考えることじゃないんだ』と思える。もし誰にも言わないで、一人で抱えていたら苦しいと思う」

 -周囲の理解が大きいんですね。

 「同じ病気でも、きっと職場や友達に明かせない人がいるはずです。でも家族に限らず、周りは意外と優しいよっていうのは知ってほしい。例えば、ランニング仲間は僕のタイムが遅くなるのを知っていて、それでも一緒に遠征に行き、先に走り終えたらゴールで待っていてくれる。そういう人の優しさは、病気がきっかけで気づけたことです」

 -今後の目標は。

 「昨年、当事者が集まるNPO法人につながり、この4月に相談員としてデビューしました。相談と言っても高尚なことではなくて、まずは話を聞いて共感する。そうやって、同じ悩みを持つ当事者に少し勇気を出してもらえるようにしたい」
(聞き手・那谷享平)