「人間関係リセット症候群」の背景や対処法を語る大阪経済大経営学部の田中健吾教授=大阪市東淀川区大隅2、大阪経済大学

「人間関係リセット症候群」の背景や対処法を語る大阪経済大経営学部の田中健吾教授=大阪市東淀川区大隅2、大阪経済大学

■SNSの通知減など調整を

 「人間関係リセット症候群」は交流サイト(SNS)のアカウントを削除するなど、今まで築いてきた人との関係を突然断ってしまうことを指します。「心当たりがある」と言う友人もいて、実は私も…。今回は「特別編」として、職場のストレスやメンタルヘルスに詳しい大阪経済大経営学部の田中健吾教授(産業・組織心理学)に背景や対処法を聞きました。

 -その症候群とは…。

 「対人関係を突然断ち切る傾向を示す俗称です。今は、LINE(ライン)の友だちからいきなり消えてしまうという例が一番多いのではないでしょうか。亡くなったとか、仕事を辞めたわけでもないのに、更新や投稿がなくなり、SNSなどのコミュニティーから見えなくなることが一般的に言われる行動です」

 「SNSは意見を投稿し、コメントをもらい成立します。『いいね』『友だち』の数が可視化され、自分は友人に恵まれていると思っても、より多くのいいね、友だちのいる他者がいる。そうなると比較が生じて孤独を深め、理想と現実にズレが出ます。そして返信があるとかないとか、そういうことが増えれば少しずつしんどくなります」

 「そんな時にSNSなどのツールと距離を取りたくなるのは、通常のストレス反応です。人とのつながりが自分の想定を超えると、一気にゼロにしたいとなってしまう。『症候群』と変な風に呼ばれていますが、病気でも何でもないんです」

 -人間関係にストレスを感じる人が増えたのか。

 「現代は常に誰かとつながり続ける『常時接続社会』です。その中で、深い関わりを避けつつ、それでもつながりたいというニーズにSNSは合うのかもしれません。だからSNS上の友だちはリセットの対象になりやすい。最近は人間関係の『軽量化』が進んだ気がします」

 「また転職や引っ越しにより人間関係が固定的ではないという価値観や、無理して付き合わなくてよいという個人主義の広がりも背景にあるかもしれません」

 「孤独感も一因になり得ます。気分が晴れた状態のまま人間関係を断ち切る人はいないはずです。気分が落ち込んだり、情緒が不安定になったりして、さみしいのに断ち切ってしまう。ここに一つの矛盾は生じます。意外と酒を飲んだ後は、孤独感を深める傾向があるようです」

 -リセットしたいという衝動への対処法は。

 「コロナ禍に会議や授業でオンラインが増えた時期がありました。オンラインは意見の不一致が少なく、簡単にオンとオフを切り替えられます。思春期に使った世代が少しずつ世間の中心になっていくと、こういった人間関係の問題は増えるでしょう」

 「まず突然会社を辞めるなどと生活に支障が生じる場合を除けば、あえて対処する必要はありません。ただ、いきなり人間関係をリセットすることは、ネガティブな感情にさいなまれて負の循環に陥る可能性があるため、注意が必要です」

 「消したいという衝動が出たら、24時間待って翌日にもう一回考えるといったルールを決めるだけでも落ち着きます。ラインやSNSの通知を減らしたり、ミュート機能を使ったりと、段階的に調整する方法も効果があるかもしれません」(聞き手・千葉翔大)