満員のスタンドで応援するタイガースの応援団=昭和39(1964)年、甲子園球場

 今年9月7日、甲子園。日本プロ野球が2リーグ制になって最速優勝を果たした阪神タイガースの指揮官、藤川球児が宙に舞った。就任1年目で球団創設90年の節目をリーグ制覇で飾った男は、暗黒時代から常勝軍団への変革期を身をもって知る。その原点に藤川が「恩師」と呼ぶ2人の将がいた。

藤村富美男の墓を詣でタイガース蘇生を誓う星野仙一=平成14(2002)年3月28日、神戸市北区

 2002年3月28日。この年から阪神の監督を担う星野仙一は開幕を前に、背番号77の縦じまのユニホーム姿で初代ミスタータイガース藤村富美男、2代目の村山実の墓を訪れた。チームは直近7年で最下位6度。墓前で「鬼になる」と誓った。取り戻そうと心に期したものがあった。

球団初優勝を果たした2代目監督の石本秀一

 阪神の前身大阪タイガースは1935(昭和20)年に誕生した。大日本東京野球倶楽部(現巨人)に遅れること1年。猛虎の歴史は翌36年に始まるプロ野球の盟主、巨人軍への反骨の歴史でもある。

「物干し竿」と呼ばれる長いバットが藤村富美男のトレードマークだった