神戸空港でトキエアの機体に乗り込む搭乗客ら=7月、神戸市中央区

神戸空港でトキエアの機体に乗り込む搭乗客ら=7月、神戸市中央区

 今年3月に神戸-新潟線を就航した地域航空会社トキエア(新潟市)が、9月12日から同路線を1日2往復に増便する。長谷川政樹社長は神戸新聞社のインタビューに応じ、就航から半年での増便について「乗客が増えており、使い勝手をよくするため」と語った。(大島光貴)

 同路線は3月30日から1日1往復(金、土、日、月曜)を運航している。過去に運航した航空会社2社は、いずれも搭乗率の低迷から休止した。長谷川氏は「搭乗率が(4月の44%から7月には62%に)上昇し、神戸を午前中に発着する便を増やすことにした」と明かした。都市部への近さや国際線との乗り継ぎが可能など、神戸空港の利便性を発信して継続的な運航を目指す考えも示した。

トキエアの長谷川政樹社長(同社提供)

 インタビューの一問一答は次の通り。

 -増便を決めた理由は。

 「1往復だと顧客の使い勝手が悪い。早く2往復を飛ばしたかった。神戸と新潟での滞在時間を延ばすため、午前便が欲しいという要望もあった」

 -神戸空港の魅力とは。

 「大阪(伊丹)空港は航空会社との関係性があって参入しにくい。関西空港は大阪圏から距離がある。神戸空港の周辺人口は多く、大阪や京都へのアクセスも良い。国際線も就航し、新潟から関西方面に飛ばすなら神戸だと、会社の設立当初から考えていた」

トキエアの機内=7月

 -神戸-新潟線はかつて、全日本空輸とフジドリームエアラインズが運航したが、就航後1年余りで休止に追い込まれた。

 「(新潟では)神戸空港の利便性を知らない方が多い。ポートライナーや鉄道、バスなど空港からの便利な交通手段を紹介する。一方、関西では伊丹より神戸の方が、割安な運賃で飛行機に乗れることが知られている。当社も価格競争力はあり、関西では大阪の方々による利用が最も多い。中国・四国地方への案内や集客にも力を入れたい」

 「海外の航空会社と連携に向けた話を始めた。中国・上海から新潟に入り、トキエアに乗って神戸に行き、神戸から帰るようなツアーを作ってもらえないかと期待している。平日はビジネス需要が少ない。インバウンド(訪日客)の取り込みが課題になる」

 -5月に国の認可を受け、貨物輸送が可能になった。

 「小口貨物を想定している。神戸はお菓子などの加工が得意。新潟で採れた果物や野菜を神戸で加工し、新潟で販売するようなやりとりができれば理想的だ」

【はせがわ・まさき】同志社大文学部卒。92年日本航空。10年新潟県庁に転じ、格安航空会社のジェットスター・ジャパンや三菱重工業などを経て、20年トキエアを設立。新潟県出身。

■地方空港を結ぶ路線、搭乗率アップが課題

 新潟空港を拠点とするトキエアは2024年1月、札幌(丘珠)線に就航し、独立系航空会社としては15年ぶりに新規参入した。現在は名古屋(中部)、神戸線を含む3路線を運航する。ただ、地方空港間を結ぶ路線で乗客を安定して確保するのは難しく、搭乗率アップへの模索を続ける。

 同社は72人乗りを2機と、今春追加した46人乗りの計3機のプロペラ機を運用する。1年余りで4路線に就航したが、搭乗率が31%と低迷した仙台線は、今年3月に運休(夏休み期間を除く)した。同社の決算は最終赤字が続き、25年3月期は約26億円の純損失を計上している。

神戸空港に到着したトキエアの機体=7月、神戸市中央区

 搭乗率70%(現在の神戸線は60%台)への引き上げを目指す同社は、路線網の見直しを進める。好調な神戸線と名古屋線を増便し、冬季でも需要が見込める名古屋-札幌線を新設する。

 地域航空会社のフジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)も、課題は共通する。今年10月には神戸空港発着路線のうち、花巻(岩手県)線を運休する。1日2往復する松本(長野県)線の1往復と青森線も、年末・年始を除いて運休する予定。いずれも冬季の旅客減を理由にしている。(大島光貴)