2021年の暮れ、神戸村野工業高校(現・彩星工科高、長田区五番町8)の応接室。神戸村野学園理事長、村野利樹(52)が入室すると、平田徹(40)がスーツに紺色のネクタイ姿で待っていた。
「目力がある」
村野は初めて会う平田の第一印象をそう感じた。横浜高野球部監督を解任されて2年が過ぎていた平田。村野と膝をつき合わすような距離で、高校野球に対する思いを熱っぽく語った。
後日、村野は平田に連絡を取った。「本校の生徒を理解し、技術指導に当たってくれますか」。平田は「喜んで。必ずお約束します」と即答した。
校名変更を機に硬式野球部の復活を期す学校にとり、これ以上ない強力なピースが加わった瞬間だった。