川崎重工業神戸工場で建造された潜水艦=2021年3月、神戸市中央区
川崎重工業神戸工場で建造された潜水艦=2021年3月、神戸市中央区

 川崎重工業(神戸市中央区)は29日、同社が神戸工場(同)で製造する海上自衛隊の潜水艦用ディーゼルエンジンについて、燃費性能の検査で不正をしていた可能性があると発表した。2021年までに製造した同エンジンの一部で不正があった疑いがあり、今月上旬、防衛省に報告したという。同社は「引き続き、調査に全面的に協力し、再発防止策に徹底して取り組む」としている。

 川重は昨年8月、商船向けの大型エンジン673台の検査で、顧客の求める燃費性能に沿うようデータを改ざんするなどの不正があったと発表。外部の弁護士らでつくる特別調査委員会を設置し、不正について詳細を調査していた。

 川重によると、今年6月に調査委から「潜水艦エンジンの一部でも検査不正をしていた可能性がある」と指摘があり、8月上旬に「不正の可能性がより高まった」と連絡があったという。

 川重は、不正があった時期や手法、台数、型式などの詳細は「調査中のため不明」としている。潜水艦の運用や安全への影響については「防衛省から報告がなく、現時点ではないと考えている」とコメントした。

 海自の潜水艦は通常、艦内に搭載した電池でモーターを回し、水中を航行する。ディーゼルエンジンは電池への充電に用いるほか、水上を航行する際の動力として使われる。一つの潜水艦にエンジンを2台搭載しているという。

 川重では昨年、潜水艦修理契約を巡り、下請け企業との架空取引で裏金を捻出し、潜水艦乗組員らに物品を提供したり、飲食代を負担したりしていたことが発覚。潜水艦部門の責任者の役員が退任し、橋本康彦社長ら役員7人が報酬を返上したほか、社員43人を処分した。