フランスの高級ブランド、ルイ・ヴィトンの創業170周年を記念する大規模展覧会「ビジョナリー・ジャーニー」展が、大阪市北区の大阪中之島美術館で開催されている。原点であるトランクから最新のコレクションまで、初公開を含む千点以上、さらに200点を超す日本の伝統工芸品を展示。19世紀から続く日本との深いつながりに焦点を当てながら、その神髄を多角的に伝える。(谷口夏乃)
■世界初公開、貴重な生地見本も
同展はタイ・バンコク、中国・上海で開催された内容を基に、日本独自の視点を加えて構成する。
創業者のルイ・ヴィトンは1854年、パリのカプシーヌ通りに世界初の旅行用かばん専門店を開いた。ふたが平らなトランクやトランク一体型の折りたたみ式ベッドなど、ライフスタイルの変化や交通手段の発展とともに、革新的な商品を世に送り出してきた。
67年、パリ万国博覧会に日本が初参加したのを機に、「ジャポニズム」ブームが巻き起こり、ブランドの代名詞「モノグラム・キャンバス」の誕生にも影響したとされる。モノグラムは、ルイ・ヴィトンの頭文字「LV」と、4枚の花びらをあしらった円とひし形の幾何学模様を組み合わせた独自の意匠で、96年に2代目のジョルジュ・ヴィトンが考案した。今展のキュレーター、フロランス・ミュラーさんは「モノグラムは、日本の刀のつばや家紋の模様にインスピレーションを受けた、というのが私たちの中では濃厚(な説)になっている」と説明する。
会場には四弁花模様の刀のつばのほか、徳川11代将軍家斉が所有していたとされる、家紋で彩られた漆塗りのトランクを展示。モノグラムとの類似点が多く、日本文化との深い関係性を裏付ける。97年に商標登録されたモノグラム・キャンバスの生地見本は世界初公開。2021年にパリ市立公文書館で見つかった貴重な資料だ。
さらにジャポニズムの影響を受けた3代目のガストン・ルイ・ヴィトンをはじめ、1997年のプレタポルテ(高級既製服)参入以降、マーク・ジェイコブスやニコラ・ジェスキエールら歴代デザイナーの作品が、甲冑(かっちゅう)(神戸・香雪美術館所蔵)やこいのぼりなど日本の工芸品とともに飾られている。歌舞伎や着物など、日本文化から影響を受けた洋服やバッグもある。
米デザイナーのスティーブン・スプラウス、米ストリートブランドのシュプリーム、日本の現代美術作家、草間彌生、村上隆とのコラボレーションなど、国境や文化を超え生み出された個性あふれる作品も並ぶ。常に新たな挑戦を続けてきたブランドの変わらない姿勢を物語っている。
9月17日まで。一般2千円。大学・専門学生1500円。高校生以下無料(要事前予約)。月曜休館(ただし9月15日は開館)。午前10時~午後5時(金、土、祝前日は午後7時まで)。大阪市総合コールセンターTEL06・4301・7285