■「科学の限界」遺された問い
今回1人だけ、故人の作品が並ぶ。現代美術作家の國府理。その代表作「水中エンジン」は、通常の再展示の過程と異なり、大きな問題と矛盾をはらんだ。
國府は1970年、京都府生まれ。自転車や自動車を用い、自然と人工物の対比や、エネルギーの循環をテーマに創作してきたが、2014年、作品点検中の事故で亡くなった。44歳だった。
「水中エンジン」は、東日本大震災による東京電力福島第1原発事故から着想し、12年に発表された。國府が愛用していた軽トラックのエンジンを水中に沈めて動かす。発動し、熱を放つエンジンの周りの水が、温度上昇をコントロールする。熱源を冷却しながら稼働させる仕組みは、原子力発電所と同じ構造だ。