読者からの投稿作品を紙面で掲載する「神戸新聞文芸」のエッセー・小説部門で、3月に入選した作品を紹介します。

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「小さい手」 緑北洋・作

「おばちゃん、手ぇ小さいなぁ」

 夫のサトシが老人ホームのベッドに横になっている輝代の手を色白の細い指で包むように握っている。何気なく自然に手を添えるのがサトシらしい。子どものなかった輝代にとって姪(めい)の私とサトシは数少ない身内だ。