ライブハウスやバーが集まる、神戸ジャズの中心・北野坂からは海側へ歩いて約15分。日が沈むと人通りもまばらな神戸旧居留地の東端に、夜な夜な熱いライブが繰り広げられているビルがある。異国情緒漂う街でレトロな雰囲気を醸す「高砂ビル」。「モットーは神戸ジャズを次世代へ。小さなビルやけど、いつも音楽が流れてにぎわいのあるビルを目指してきた」。管理・運営する高砂商行の社長李啓洋(77)はそう語る。
6階建てのビルに、音楽やダンスのレンタルスタジオ24部屋、最大100人を収容できる多目的ホール「100BANホール」、8台のグランドピアノを備える。連日、プロのアーティスト、学生、サラリーマン、主婦らさまざまな人たちが練習やライブのため出入りする。
ジャズを中心に音楽のホットスポットとして、神戸で独特の存在感を放つ高砂ビル。歴史の始まりは戦前にさかのぼる。
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1926年、台湾から来神した啓洋の伯父と父親は、世界的に大流行していたパナマ帽などの帽子の製造や素材の輸出入を手がけ成功を収めた。終戦後、配給物資だったセメント材料をいち早く確保すると、49年高砂ビルを建設し、倉庫として営業を始めた。