深刻な不漁が続くイカナゴの資源回復を目指し、兵庫県漁業協同組合連合会などが、ユニークな取り組みを進めている。漁業者らが育てたイカナゴを放流することで、海水温が上昇傾向にある夏を乗り切り、栄養を蓄えた状態で産卵するイカナゴを増やす狙いという。明石や淡路沖で放流する漁船に同乗した。(新田欧介)
5月19日午後、林崎漁港(明石市林3)。漁業関係者らとともに、放流のための漁船に乗り込んだ。林崎漁協組合長で、県漁連の田沼政男会長(72)がゆっくりとエンジンをかける。この日は約3時間かけ、2カ所の浅瀬に向かうという。
発泡スチロールの角の丸い水槽の中で、体長9センチほどのイカナゴがすいすいと泳いでいる。「イカナゴは前にしか進めないので、角張った水槽だとけがをしてしまう」。県漁連の職員が教えてくれた。
この取り組みは、昨年の夏からスタートした。今年は、播磨灘や大阪湾の計4カ所で計12万匹を放流。昨年の1500匹から大幅に増やした。
イカナゴは暑さに弱く、水温が20度を超え始めると砂の中に潜り、半年近く何も食べない「夏眠」と呼ばれる状態に入る。12月下旬に砂から出て、産卵の時期を迎える。だが、近年の海水温上昇で夏眠に入る時期が早まると、その分摂取できる栄養も少なくなる上、餌不足の影響も懸念されるという。
そこで、県漁連などは、夏眠前のイカナゴに十分に栄養を取らせることで夏を越せる個体数を増やせるのでは、と考えたそうだ。今回は4月末に愛媛県で購入したイカナゴを、姫路や明石、淡路などの漁協が海上と陸上の計14カ所で約3週間かけ、体長9センチ前後、重さ3グラムほどまで育てた。
出発から45分後。船は最初の放流場所「鹿ノ瀬」に到着した。播磨灘に約20キロにわたって伸びる鹿ノ瀬は、明石海峡から流された砂が堆積してできた浅瀬。砂地がイカナゴの格好のすみかとなるだけでなく、崖や岩場など変化に富んだ地形で、プランクトンや大小の魚が集まる天然の漁場になっているそうだ。
「傷が付かんようにゆっくり放してな」。田沼会長が呼びかけると、漁師らは円形の大きな水槽にホースを突っ込み、吸い上げられた大きさ9センチ前後のイカナゴを次々と海へ。淡路市沖の室津ノ瀬でも同じように放流した。
シンコで作るくぎ煮は長年庶民の味として親しまれてきたが、近年は不漁で漁の解禁日が数日間と限られ、価格も高級魚のようになった。「昔はゴールデンウイークくらいまでイカナゴが取れとったときもあるからね。時代の流れを感じるね」。帰りの船で、同漁協の職員がぽつりと言った。
「イカナゴはサワラやヒラメとか、たくさんの魚の餌になる。より豊かな海にしていくためにも少しでも数が増えれば」と田沼会長。今後も放流を続け、イカナゴが育ちやすい環境の分析を進めるという。新たな取り組みの成果に注目したい。























