2023
2023年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。
受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、努力賞にはニコンイメージングジャパンから副賞の撮影用品が贈られます。
表彰式は3月13日、神戸新聞本社で行います。
春名サトミ
10月一席
高砂市の曽根天満宮であった秋祭りを目当てに行ったところ、現地で相撲大会があると知って、撮影することにしました。40分間ぐらいカメラを構えました。父親の悔しそうな表情が印象的な1枚を選びました。背景に大勢の観客が写り込んでいたので、父親の表情が際立つように、あえてモノクロでプリントしました。写真歴は約30年。山歩きが趣味で、美しい風景を写真で残したいと思い、始めました。人間の喜怒哀楽を写真で切り取る楽しさを写真教室の先生に教わり、人物をよく観察するようになりました。初の大きな賞で、信じられないぐらいにうれしい。これからも自分が面白いと感じた被写体に素直にカメラを向けていきたいです。
梅谷詠子
4月二席
姫路市の夢前川堤防。桜並木の下で、モデル役の娘2人の笑顔が重なった瞬間、シャッターを切りました。ひらりと舞い落ちる花びらが、彼女たちのワンピースの上に止まり、手応えを感じました。その写真を2人に見せたところ、「めっちゃいい」と感激。コンテストに出すカットはすぐに決まりました。姫路市内のカメラ専門店でアルバイトを始めてから、写真歴は20年以上になります。入賞歴はありますが、今回が最高の賞です。何か買ってモデルのお礼をしなくちゃ。これからも、成長の記録も兼ねて娘たちときれいな景色を撮っていきます。
南出敦子
7月一席
インスタグラムを通じて知ったシャボン玉のイベントを撮影させてもらいました。何度シャッターを切ったかは覚えていませんが、夕方の空とシャボン玉、子どもたちのバランスがよい瞬間に出合うことができました。写真が趣味の夫と一緒に楽しめると思い、4年前にカメラを持ち始めました。夜景や天体、祭りなど興味を持った被写体にレンズを向けています。心がけているのは、撮影場所が分かるような1枚に仕上げること。力作ぞろいのコンテストで受賞することができて驚いています。さらに斬新な写真が撮れるように頑張ります。
米沢貞雄
12月一席
毎朝の日課で日の出に合わせ、姫路市飾磨区にある自宅から近くの御旅山に登ると、約5キロ先にある姫路城と手前の街が霧に包まれていて驚きました。急きょ、自宅の妻に電話してカメラの望遠レンズを持ってきてもらい、受け取ってから山頂まで10分、急いで上がりました。汗だくになって着くと霧はまだ残っていました。初めて見る景色。夢中でたくさん撮りました。写真は60歳を過ぎてから続けていますが、大きな賞をもらえて感激です。長い間やってきて良かった。これからも「感動を覚えてもらえるようなカット」を狙っていきます。
▼勝負の行方 モノクロで劇的に
年間賞は12月の受賞作決定後、月例コンテストの一、二席24点から、映像写真部デスクが候補作を12点に絞る1次審査を行った。2次審査では、編集局の局長、局次長、各部長ら12人を審査員に、1位から順に4点、3点、2点、1点を配して投票。加点方式で4作品を決定した。
1位票を最も多く集めた春名サトミさんの「せがれに負けた」が最優秀賞に選ばれた。秋祭りの相撲で親子の取り組みに遭遇。観衆が見守る中、晴れやかな息子の笑顔よりも敗れて心の底から悔しそうにする父親の表情に広角レンズで肉薄した。モノクロ写真にすることで、一瞬の出来事をドラマチックに伝えた。
桜の花びらが舞う中を手をつないだ姉妹が歩く梅谷詠子さんの「秒速5センチメートル」が優秀賞に。逆光を利用して満開の桜を適度にぼかすことで、春らしさを引き出した
努力賞は南出敦子さんの「ファンタスティック、スカイ」に。無数のシャボン玉が輝きながら夕暮れの空に広がる瞬間を捉えた。
奨励賞の米澤貞雄さんの「霧に包まれた街」は、霧の中に浮かぶ姫路城と市街地のビル群を超望遠レンズで幻想的に切り取った。
次点は德永直久さんの「下町の銭湯」だった。
昨年の本紙を振り返るとさまざまなニュースの中に「4年ぶり」という言葉が数え切れないほど現れます。一時期は県境を越えることもはばかられた新型コロナ禍を乗り越え、人々が再び集う場面が全国各地で見られました。当コンテストにも祭りやイベントだけでなく、日々の暮らしの中で人とのふれ合いや、出先での感動を作品にしたものが数多く届いています。今回の受賞作を振り返っても、一瞬を逃さない眼力や季節の移ろいを1枚に仕上げる腕前には目を見張るものがありました。
2024年を迎えると同時に発生した能登半島地震の惨状に言葉を失いました。日常が一瞬にして奪われることを思うと、小さな出会いや身近な人のちょっとしたしぐさもいとおしく感じられます。ジャンルを問わず目の前の出来事を記録することが「報道写真」の役割のひとつです。被写体と真剣に向き合い、1コマ1コマを確かめながらシャッターを押してみてください。2023年の応募総数は4401点でした。またとない瞬間を切り取ってみてください。
(映像写真部長 藤家 武)