2020
2020年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。
受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、
努力賞にはニコンイメージングジャパンから副賞の写真機材が贈られます。
表彰式は3月9日、神戸新聞本社で行います。
橋本直子
12月一席
長女の誕生をきっかけに写真を始めて15年。初めはコンデジだったカメラが一眼になり、ファインダー越しに見つめる3人きょうだいの姿もすっかり大きくなりました。 受賞作は昨年、家族5人で訪ねた京都市の「ガーデンミュージアム比叡」での1枚です。次女の千咲(7)のかぶる帽子が、絵の女性のものと色が似ていたので、夫に抱き上げてもらいポーズを重ねてみました。最近はカメラを向けると恥ずかしがるのですが、少ないシャッターチャンスで収められました。 卒業や成人、結婚。子どもたちの人生の節目がたくさん待っています。そのシーンをきれいに撮ってあげるためにも、年間最優秀賞を励みに一層腕を磨いていこうと思います。
伊藤賢治
11月一席
5年前に東京から神戸に帰ってきてから、母親の写真を撮り続けてきました。子どもたちと違い、年をとると写真に写る機会が少なくなるので、思い出というか、少しでも記録しときたいなと。 普段は一眼レフで撮影していますが、昼寝の場面は起こさないよう、あえてコンパクトカメラを使いました。 何度か撮影した場面ですが、いい感じで差し込んできた光や年齢などの雰囲気を生かそうとモノクロで。紙面掲載された時、母もとても喜んでいました。 賞に選ばれて私自身が光栄なのはもちろん、母も喜んでくれると思います。
森田昭
4月二席
昨春小学生になった孫がコロナ禍による休校中、自宅の庭で遊んでいました。2階にいた私は彼女が友達と話していると思っていたのですが、外を見ると並べた犬のおもちゃたちに話しかけていました。その姿が何ともかわいくって。上から何十枚と撮り、選び抜いたのがこの1枚です。 50年以上も前になりますか。海上自衛隊で配属先の宿直士官が同じ名字で写真班だったのがカメラを始める縁でした。年もあって遠くに出る機会は減りましたが、写真雑誌や新聞で勉強する日々は変わりません。自己満足せず、よりよい写真を目指し続けます。
木村興子
2月一席
旅行先でハプニングに巻き込まれたときの1枚です。 出発しようとバスに乗り込んだら、前日の雨でぬかるんだ河川敷で動かなくなってしまって。運転手さんの奮闘も実らず、車内には自然と協力の空気が芽生えました。 みんなでバスを押している姿は、まさにラグビーの「ワンチーム」に見えて、シャッターを切りました。結局、代替えのバスに乗り換えましたが…。 夫婦で写真を楽しんでいて、風景だけでなく「人の営み」といった場面も面白いなと思ったら撮影しているので、受賞はうれしく思います。
新型コロナウイルスによって暮らしが一変し、応募作にも影響が色濃く現れた1年でした。
在宅での過ごし方にレンズを向けたり、撮影旅行を控えて季節の変化をご近所の風景に探し求めたり。それぞれのテーマを見つめ直す機会でもあったと感じます。
例年多く寄せられる祭事やイベントの作品は激減しました。それでも「今を伝えたい」というみなさんの意欲で、年間の応募総数は前年より200点増え、4409点となりました。
年間賞はいずれも人物が主役です。気が沈みがちな世の中にあって、ユーモアを交え気持ちを前向きにさせてくれる。変わらぬ幸せな日常を再認識する。そんな温もりのある作品が高い評価を得たことも、時代を象徴していると思います。
いまだ緊張した日々が続きますが、1枚の写真が持つ力を信じて、身近な記録を続けていきましょう。
(映像写真部長 岡本好太郎)
▼家族愛に満ちた秀作に栄冠
年間賞は12月の受賞作決定後、月例コンテストの一、二席24点から、映像写真部デスクが候補作を13点に絞る1次審査を行った。2次審査では、編集局の局長、局次長、各部長ら13人を審査員に、1位から順に4点、3点、2点、1点を配して投票。加点方式で4作品を決定した。
上位票を広く集め同点で抜け出したのが橋本直子さんの「まねっこ」と伊藤賢治さんの「卒寿の母、長生きの秘訣は昼寝」だった。どちらも家族愛に満ちた秀作だが、マスク姿が今年を印象づける1枚との声も多く「まねっこ」を年間最優秀に選び、「卒寿の母―」を優秀賞とした。
努力賞は森田昭さんの「じょうずでしょう」。発想豊かな少女の世界をそっとのぞき込むようなアングルが支持され、1位票も複数あった。
奨励賞には、ハプニングに反応し的確に状況を押さえた木村興子さんの「ワンチーム」を選んだ。
次点はコロナ禍の子どもたちを表現した北本重安さんの「あぜ道通学再び」、北本峰子さんの「はっきよーい!!」の2点だった。