2019
2019年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。
受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、
努力賞にはニコンイメージングジャパンから、副賞の写真機材が贈られます。
表彰式は3月10日、神戸新聞本社で行います。
藤本弘樹
9月一席
砂遊びが大好きな長女の樹里(じゅり)(4)と長男(1)を、広いところで遊ばせてあげたいなと思って連れて行った、たつの・新舞子の干潟でした。いい写真も撮れたらいいな、と。 晴れてはいたのですが、太陽が雲に隠れる時間帯も多くて、チャンスはなかなか訪れませんでした。空が水面に反射して娘の姿も映えるタイミングを待ちました。 日ごろから子どもたちの自然なしぐさや喜怒哀楽のこもった表情を撮影しています。レンズを意識させないようにして、夢中になっていたり、ふとした瞬間をとらえる。そういうことを心がけています。令和最初の最優秀賞。何より我が子の写真で受賞できたことが本当にうれしいです。
上野純子
5月一席
かわいらしいカルガモの赤ちゃんを撮影していると、アオサギが近づいてきました。「優雅で美しいなあ」と思っていたら、突然、1羽の赤ちゃんをくわえてしまいました。 驚きましたが、走って追いかけ、夢中でシャッターを押しました。連写した5枚ほどのうち、「なにするのよ!」と叫ぶように口を開けた親鳥が写り込んでいる1枚を選びました。自然のおきてを目の当たりにしたように感じました。風景や祭りなどを撮ることが多いですが、今回は想像以上の場面に遭遇し、あらためて写真の奥深さを知りました。
辻本篤人
10月一席
写真が趣味の母の作品を見て、「どうやったらこんなにきれいに撮れるんだろう」と興味を持ちました。7歳から本格的に撮影を始めました。人の自然な様子にレンズを向けるのが好きです。 受賞作は、母が妊娠中の友人に撮影を頼まれた時に同行して撮ったうちの1枚です。モデルの女性が休憩のためソファに横たわった様子が、とてもリラックスしていたので、迷わずシャッターを押しました。目標は「お母さんより上手に撮れるようになること」。人だけではなく自然や動物なども被写体に、これからも写真を続けます。
大西敏晴
4月一席
自宅の裏にある川で撮影しました。30年ほど前に区画整理があり、その時に桜並木が作られました。幹が小さい時から年中、撮影してきましたが、木が立派に育って、最近は本当に美しい春がやってきます。この日もいつものように撮影に出掛けると、若い女性たちが見に来ていました。川の中に入りたいというので案内したのですが、千載一遇のチャンスだと思いました。川一面をびっしり埋め尽くす桜の花びらと、日没間近の紫がかった光、その中に立つ女性の後ろ姿。今までこの川で見てきた中でも三指に入る幻想的な光景でした。
平成から令和へ。時代をまたいだ2019年の年間賞は、素直な感動や一瞬を記録した作品が揃いました。受賞者のコメントを読み、改めて作品を見返すと、「写真は心を写す」という言葉がしっくりときます。
昨年の応募作は4209点。一昨年よりやや減りましたが、ベテラン勢を追う中堅、新人の応募作も増えており、競争はますます激しくなっています。
コンテストは技術を磨く場であり、学ぶ場。参加して下さる皆さんにこの場を借りて感謝申し上げるとともに、〝今〟を感じさせる1枚を今年もよろしくお願いします。
(映像写真部長 岡本好太郎)
▼好スケッチ、総合点で栄冠
年間賞は12月の受賞者決定後、月例コンテストの一、二席24点から、映像写真部のデスク5人が協議し、候補作を12点に絞る1次審査を行った。2次審査では、編集局の局長、局次長、各部長ら13人が、1位から順に4点、3点、2点、1点を配して投票。加点方式で4作品を決定した。
最優秀賞には藤本弘樹さんの「天空の少女」を選んだ。青空に浮かぶ秋の気配を感じる雲をリフレクション(反射)撮影で切り取った好スケッチ。砂遊びに興じる少女が絶景を独り占めする印象的な1枚に仕上げ、タイトルもはまった。7人が1、2位票を投じるなど、各審査員から広く票を集め総合点で抜け出した。
優秀賞は上野純子さんの「カルガモのヒナを捕食」。サギがヒナをくわえた決定的瞬間を捉え、親鳥が悲痛な叫びをあげる姿までも写し込んだ絶妙な構図で1位票を多く集めたが、総合点で及ばなかった。
僅差で続いた辻本篤人さんの「令和のマタママ」を努力賞に選んだ。くつろぎ、穏やかな笑みをたたえた表情から、母になる喜びがひしひしと伝わってくる秀作。小学生の受賞は初で、年間賞の最年少記録を更新した。
奨励賞は大西敏晴さんの「花筏に感動」。見事な場所の選定と、アンダー気味の露出で非日常的な空間を演出した技術の高さが光った。次点は、独特の感性で深まる秋を表現した林由喜夫さんの「階段の譜面」だった。