神戸新聞NEXT | 読者の報道写真コンテスト | 年間賞 | 2018
神戸新聞社 読者の報道写真コンテスト

読者の報道写真コンテスト

年間賞

年間賞

2018

2018年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。

受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、

努力賞にはニコンイメージングジャパンから、副賞の写真機材が贈られます。

最優秀賞

最優秀賞

『嵐去り、現代生活再考の時 』

梅津郁朗

8月一席

 台風一過の美しい青空と砂浜を撮影しようと、広角レンズを携えてよく訪れる海岸に行ってみてがくぜん。大量のペットボトルが海岸を埋め尽くしていました。仕方なく気持ちを切り替え、便利な現代生活の負の側面を切り取ることに。しゃがみ込んでペットボトルに近づき遠近感が出るようにし、逆光で露出を抑え殺伐、荒涼とした現場の空気が伝わるように工夫しました。写真はフィルム時代から40年近く楽しんでいて、主に神戸近郊の海岸や農村、都市の風景を撮影しています。当初の予定と違い、予期せぬ偶然で出くわした光景ですが、これからも足で稼いで、今度はもっと明るく楽しく美しい写真で受賞したいと思います。

優秀賞

優秀賞

『横断歩道 』

高杉寛

12月一席

 JR大阪駅前の歩道橋で、列車と横断歩道の人混みをからめて撮影していると、突然横断歩道の真ん中に車が止まり、人が降りているのが見えました。信じられない光景に、列車を撮るために速くしていたシャッタースピードのまま、慌てて何枚か撮影しました。歩行者が横断歩道を埋めているカットもありましたが、車がぽつんとあるこの場面のほうが、驚きと違和感が伝わると思いました。決定的瞬間を逃さなかったことが受賞につながり、写真の面白さを感じています。今後も出会いを大切に、喜びと感動が伝わる写真を撮影していきます。

努力賞

努力賞

『猿出没 』

澤勝弘

11月一席

 青果店を構える町に「サルが出た」とお客さんから聞き、手元に置いてあるカメラを持って駆け付けました。想像以上に大きなサルが慣れた様子で路上を歩いています。距離を取ってシャッターを切っていると、後ろ姿の奥に驚く通行人。正面よりも、サル目線で雰囲気も写り込んだ1枚を選びました。10年ほど前からいろんな写真を撮っていますが、ここ2年ほど「今」を撮る意識を持つようになりました。カメラを手に歩くことで元気も湧きます。受賞は自分の感じた「今」がひとりよがりではない、と励まされる思いがします。

奨励賞

奨励賞

『僕もほしいな~ 』

三木操

12月二席

 娘が愛犬と散歩する公園に時々、キツネが姿を見せると聞いて行ってみると、確かにいました。アップで表情も狙いましたが、公園で人と戯れる柴犬と少し離れた場所にいるキツネを見た時、何か感じるものがありました。写真は40年以上前、茅葺き屋根の風景を撮り始め、美しい自然やスナップなどいろいろと撮ってきました。気に掛けていることは、どこかに人の営みが入っていること。誰が見てもきれいな写真も撮りたいけれど、でもそれだけでない、何かしら温かみがこもった1枚が撮りたいと考えています。

候補作品

候補作品

『かお じゃない!! 』

加藤昭代

11月二席

候補作品

『雪かき 』

龍野一男

2月一席

候補作品

『風神光神 』

山内勝

9月二席

審査経過

自身の感性信じチャレンジを

 2018年度の年間賞4作品が決まりました。環境、運転マナー、野生動物との共生―と、それぞれが今の私たちの暮らしぶりを問う、メッセージ性の強い報道写真です。

 受賞者の皆さんに共通するのは、ニュースを捉える視点の確かさ。無駄のない構図は経験のたまものだと思いますが、それ以上に、日々の生活の中で社会への広い関心が被写体を見る目を養い、反射的にシャッターを切る行為につながっているのだと感じます。

 惜しくも賞を逃しましたが、次点の作品は写真ならではの面白さがあり、柔軟な発想でレンズを向ける大切さを教えてくれました。

 当コンテストは、社会全般がテーマで、いわば何でもあり。それだけに「神戸新聞の月例は難しい」という声を頂くことがあります。月替わりで5人が審査しており、作品と向き合う視点も異なります。確かに、傾向を分析するのも、毎月の審査で上位に食い込むのも至難の業かもしれません。

 ただ、それだけ幅広く受け止めることができ、多くの方の作品を紹介する機会が増えています。初心者もベテランも垣根なく、いい写真は心に響きます。

 2019年は、平成から新しい時代へと移り、さまざまなキーワードがあふれそうです。日常の中の変化にまなざしを向け、自身の感性を信じ、チャレンジしてください。写真で伝える楽しさを実感できるコーナーを、今年も一緒に作っていきましょう。

(映像写真部長 岡本好太郎)

▼高い技術で時代映す

 応募総数4706点。年間賞は12月の受賞者決定後、まず1次審査を行った。月例コンテストの一、二席24点の中から、審査を担当した5人の映像写真部デスクが協議し候補作を12点に絞った。2次審査は1月22日~24日、編集局長や各部長ら13人が、1位から順に4点、3点、2点、1点を配して投票。得票数から4作品を決定した。

 最優秀賞には梅津郁朗の「嵐去り、現代生活再考の時」を選んだ。昨年は台風や豪雨が相次ぎ、廃ペットボトルが海岸を埋める様は時代を映すタイムリーな1枚。逆光線で印象的に仕上げた高い技術も評価され、6人が1位、2位票を投じ、高得点で抜け出した。

 あおり運転など、悪質ドライバーが社会問題となる中、モラルを欠いた衝撃的な場面を切り取った高杉寛の「横断歩道」も、3人の1位票を集め、優秀賞と続いた。

 いずれも住宅街に現れた野生動物の姿を捉えた澤勝弘の「猿出没」、三木操の「僕もほしいな~」は、フットワークの良さと、独特の視点で絵にする力が光り、それぞれ努力賞、奨励賞に選ばれた。次点は加藤昭代の「かお じゃない!!」だった。(敬称略)


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