2017
2017年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。
受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、
努力賞にはニコンイメージングジャパンから、副賞の写真機材が贈られます。
赤松博文
12月一席
冬らしい写真を撮ろうと、前日の天気予報で雪が降りそうだった音水湖に行くことを決めていました。以前も撮影した場所でしたが、そのときはコンパクトカメラだったので納得いく写真が撮れず悔しい思いをしていました。約50メートル先の対岸にあるコテージにピントを合わせ、横なぐりの雪が少し落ち着いたときにフラッシュをフル発光させました。白銀の世界を狙っていたのですが、ホワイトバランスを太陽光(晴天)にすると、青みがかってメルヘンチックに。狙っていた以上の作品に仕上がりました。4年前に亡くなった父親に誘われて撮り始めたのが6年前。近隣の風景やよさこい踊りを中心に週末だけの撮影ですが、現場の楽しさや驚きが伝わる写真を一生撮っていきたいと思います。
中間弘久
2月二席
開業当時は新鋭の交通システムだった姫路モノレールですが、幼少時に父と乗った時の記憶は「自分たち以外誰もいない」。その印象が強烈で、ずっと気になる存在でした。撮影はこれまで4、5回試みて、草木が邪魔をしない冬場を狙いました。ドクターイエローがうまく見える角度を探しだし、川べりに脚立を設置。ちょうど西日が橋脚に当たって、条件が良かったですね。中学から電車が好きで、高校時代は写真部。今も休みの日は全国の鉄道を撮り歩いています。続けてきてよかった。受賞は励みになります。
広瀬賢一
10月一席
明石公園であったステージイベント。戦国絵巻をテーマに多数のグループが一斉に踊る中、メインではなく脇に控える忍者装束の一団の、目線の強さに引きつけられました。しばらくは動かずにいましたが、手前の人から一人ずつ走り出しました。思わず動く人に反応しそうになりましたが、構図とピントは変えずに撮影することで「静と動」をとらえることができました。踊っている場面も撮影しましたが、自分なりの視点で切り取ったこの写真が気に入っています。今後は、地元の秋祭りを独自の視点で撮影したいと思います。
德永直久
3月一席
ミツマタを撮影した帰り道に偶然ハウスを発見しました。普段から地元のニュースには目を通しているので、丹波で同様の被害があった事を思い出し、急いで農家の主人に撮影の直談判。親切に対応してくれました。特に意識したのはひしゃげたパイプの形。美しいイメージとして取り上げられる事が多い雪ですが、それによる過酷な側面を表現したかったんです。奨励賞は、自分の社会的なまなざしが評価されたようでうれしい。これからも自分の直感を信じて、「日の当たらない」被写体にレンズを向けていこうと思います。
時勢のキーワードもヒントに
2017年度の年間賞が決まりました。応募総数は4787点。毎月のコンテストではベテラン勢の健闘が光る一方、新しい顔ぶれも上位に食い込み、今年も多彩な作品が紙面を飾りました。
振り返ってみれば、自然のスケッチや祭りなど、競合する内容が多く、より撮影者のテーマや意図が明確に伝わった作品に軍配が上がったように感じます。
年間賞では、長年、欠かさず応募を続けてきた方々が栄冠に輝きました。飽くなき好奇心、旺盛な行動力、自らに高いハードルを課し、真摯(しんし)に被写体と向き合う姿勢は共通しています。
「読者の報道写真」とは、ジャンルを問わず日常の身近な出来事を記録すると同時に、それぞれが感じた「今」を、どう写し込むかに尽きます。毎年、同じ行事、同じ場所で撮影したとしても、その年ならではの要素、独自の切り口があれば作品は生きてくるでしょう。また、時勢のキーワードをヒントに、身の回りの動きをどう写真で表現するか。そんな基本に立ち返って、まち歩きを楽しんでもらえたらと思います。
月例の審査は2010年から、4人の映像写真部デスクが月替わりで担当しています。紙面作りの経験から、それぞれの視点で応募作と〝真剣勝負〟を繰り広げています。見知らぬ風景に驚き、高い撮影技術にうなる。刺激を受けつつ、学ばせてもらっています。
2018年も、より臨場感が伝わる作品に挑んでください。心をつかむ1枚に、期待しています。
(映像写真部長 岡本好太郎)
▼色合い工夫、表現力に高い評価
年間賞の審査は1月23日~25日に行った。対象は各月例コンテストの一、二席24点。編集局長や各部長ら15人が、1位から順に4点、3点、2点、1点を配して投票した。上位票が割れて接戦となったが、1回で4作品の受賞が決まった。
最優秀賞に輝いたのは赤松博文の「湖畔の吹雪」(12月一席)。昨年末の寒波の中、宍粟市音水湖で雪景色を撮影。ホワイトバランスを工夫し、青みがかった色合いで印象的に仕上げた。厳しい寒さ、しんしんと降り積もる音が聞こえてきそうな表現力への評価も高く、1位票を集めた。
僅差で優秀賞に選ばれたのは中間弘久の「先端技術の今昔交差点」(2月二席)。姫路市街に残るモノレールの橋脚跡と新幹線の高架が交わるように見えるポイントで、鉄道愛好家らに人気の新幹線検査車両「ドクターイエロー」を絶妙なタイミングで捉えた。橋脚を使って時代を交錯させた独特の視点が光った。
努力賞には広瀬賢一の「忍びの者」(10月一席)。イベントでの1枚は舞台そでのポジショニングもよく、鋭い視線でポーズを決めた女性と、手前を横切る脚の動きがはまった。德永直久の「雪害」(3月一席)は、雪解け後も残る大雪の被害にレンズを向け、ニュースへの嗅覚を存分に発揮した1枚となった。次点には大量のスーツケースの積み込み作業で、増加する外国人観光客を表現した岡田忠良の「旅行シーズン」(4月二席)を選んだ。(敬称略)