神戸新聞NEXT | 読者の報道写真コンテスト | 年間賞 | 2015
神戸新聞社 読者の報道写真コンテスト

読者の報道写真コンテスト

年間賞

年間賞

2015

2015年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。

受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、

努力賞にはニコンイメージングジャパンから、副賞の写真機材が贈られます。

最優秀賞

最優秀賞

『竜巻発生!! 』

平石善行

9月二席

9月4日午前6時半ごろ、漁に出ようとした時、沖の空に真っ黒な雲が広がり、海面との間に白い線が3本見えました。「竜巻?」と思っていると3本が2本に、さらに1本になり巨大化し、渦を巻きながらこちらに近づいてきました。怖くなり、船を漁港の停泊場所に避難させる前に、スマートフォンでとっさに2枚撮影しました。船を留めていると、追いかけてくるように竜巻が接近。船が台風の時のように激しく揺れ、目の前数メートルを通り過ぎていきました。本当にあっという間の出来事でした。こんな賞をいただくのはなんだか申し訳ないような気もしますが、怖い思いをした〝ご褒美〟ということにして、ありがたくいただくことにします。

優秀賞

優秀賞

『滝雲 』

藤木澄男

12月二席

 最初は、来日岳からの雲海を撮影しようと家を出たのですが、気が変わり、霧が海に流れ出すことがあると聞いていた日和山海岸に向かいました。そのダイナミックな光景を目の当たりにしてびっくりでした。背景の空がきれいに撮れるのは夜明け前の10分ほど。撮影場所や露出、焦点距離などを変えながら、夢中で撮影した中の1枚です。定年後に写真を始め、地元但馬の自然のすばらしさを実感しています。公募展の入選はありますが、賞をもらうのは初めて。受賞を励みに、見る人の元気が出るような写真を追い求め続けたいです。

努力賞

努力賞

『蓮の葉陰のアストロノウト 』

廣瀬賢一

8月一席

 ハスの花の撮影中に気づいた偶然の産物です。アメンボや水面の動きを待って構図を決め、作品に奥行きが出るタイトルを考えました。愛用のレンズは重く、ピント合わせが手動なので、ブレやボケに注意しました。日頃からやや絞り込むのでシャッタースピードで露出を決めています。日々、とりあえずシャッターを切ることを大切にしています。つまらない写真でも必ず記録、記念になると思うからです。デジタルカメラは、5年前に次女からプレゼントされたのがきっかけで使い始めたので、家族に良い報告ができました。

奨励賞

奨励賞

『ホンマでっかいなあ!! 』

高橋一吉

3月一席

 船の大きさをどう表現するかに狙いを絞りました。乗船する中国人旅行客の列を待ち、船と対比させました。陸のビルや六甲山も写し込め、海と山が近い神戸らしさも出せたと思います。神戸港は私の撮影スポットの一つですが、このアングルは初めて。撮影前にインターネットで情報を集め、作品イメージを持って出かけます。写真歴は4年。気楽に自分のペースで楽しんでいます。写真は「後で撮ろう」とはいかないので、思い立ったらシャッターを切っています。

候補作品

候補作品

『夏本番 』

斎寺義則

7月一席

候補作品

『天空の姫路城 』

山口政子

2月一席

審査経過

スマホ時代 傑作が象徴

 こんな話があります。2013年4月に淡路島を襲った大地震の発生時、対岸の神戸にいた映像写真部員が、画像送信の機材がないまま現地へ走りました。現場到着の早さを優先したからです。頼りはスマートフォンだけ。撮影してはメールに添付して編集局に届け、生々しい被災直後の様子が夕刊に大きく掲載されました。

 こんな話もよく聞きます。「一眼レフだといい表情が撮れないのに、どうしてスマホだといい笑顔が撮れるのかなぁ」

 「〝今〟を記録する時に、どんな道具で、どんな写真が必要なのか」。そんなことを、あらためて考える機会になった年間賞審査でした。デジタル技術で激変する写真環境にあって、2015年の最優秀賞は、時代を象徴する1枚になりました。スマホの写真が年間最高賞に輝いたのは初めてです。

 事件や事故の現場など、一般の方が撮影した写真は年間数十枚が紙面を飾ります。最近は、多くがスマホ写真です。動画の切り出しもあります。しっかり撮られた一眼レフカメラの画質や色などとは差がありますが、リアルタイムに切り取られた写真の雄弁さは、時に何物をも凌駕します。

 当コンテストが半世紀の歩みを刻んだ2015年の応募総数は4732点。フィルムカメラでの応募がほとんどなくなりました。今後は「スマホ」を特筆することもなくなるでしょう。

 「時代」をどんな道具で、どう撮るか。2016年も皆さんと一緒に、悩みながら、記録し、記憶に刻んでいきたいと思います。

(映像センター長 冨居雅人)

▼自然の猛威と美 評価高く

 年間賞審査は1月22日、月例コンテストの各一、二席24点を対象に行った。編集局長はじめ各部長ら15人が、それぞれ4作品を順位をつけて選んだ。1位4点、2位3点、3位2点、4位1点を配し、1回目の投票で4作品が決まった。

 最優秀賞は「竜巻発生!!」。海上から迫り来る巨大な竜巻をスマートフォンで撮影し、本紙に提供した。当日夕刊と翌朝刊の1面を飾った。4人の1位票と、多くの上位票を集めて頂点に立った。

 優秀賞は「滝雲」。豊岡盆地から日本海へ霧が流れ出す珍しい現象を、美しい風景に収めた。3人が1位票を投じ高得点となった。

 努力賞「蓮の葉陰のアストロノウト」は、ため池を宇宙に見立てた発想が審査員をうならせた。昨今の宇宙ブームにちなんだ〝ニュース写真〟だ。次点「ホンマでっかいなあ!!」は、豪華客船を陸のタワーマンションと並べた撮り方が秀逸で、上位に迫った。


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