2014
2014年の「読者の報道写真コンテスト」年間賞が決まりました。
受賞者には正賞のほか、最優秀、優秀、奨励の各賞には神戸新聞社から、
努力賞にはニコンイメージングジャパンから、副賞の写真機材が贈られます。
常澤健壽
2月二席
2月8日朝5時半ごろ、家の裏を走る山陽道からの「ドーン」という大きな音で目覚めました。すぐに事故と直感。1時間ほど夜明けを待って様子を見に出掛けました。防音壁や樹木が邪魔で全景が見渡せる場所がなかなか見つからず、ここしかないと思った道路橋から見えた現場は、寝床の中で想像した通りで驚きながらシャッターを切りました。帰宅すると娘から投稿を薦められ、夕刊に掲載され、また驚きました。海外で農業研修を受けた際、記録用にカメラとビデオを始めて55年ですが、詳しい知識はありません。今回の写真はタイミングのたまものです。今後も、どんな場面でもすぐに撮影に臨めるような心構えだけは大切にしていきたいです。
市川彰三
11月一席
カモメは毎日朝晩、撮りに行ってます。この日、魚住海岸の突堤に向かうと、集団から少し離れてたたずむカモメがいました。不思議に思ってよく見ると、口には釣り針が。「どないしてくれるんや。撮ってくれよ」。そう訴えているように見え、とっさにシャッターを切ったんです。これが受賞するとは予想していなかったので、非常に驚いてます。カメラ歴はもう60年近くになりますが、まだまだやめるつもりはありません。将来、孫が、写真を通じて私の生きてきた時代を分かってくれたらうれしい。そんな思いでカメラを構えています。
白石正春
2月一席
受賞作は、およそ1か月半の間、毎週末ひたすら狙って生まれたものです。シャッターチャンスはこれまでもありましたが、ピントがぼけていたり被写体が遠すぎたり。やっと満足のいくミサゴを捉えた時は、「きたがな」と一人で興奮しましたよ。500ミリレンズの選択、ピント、太陽の当たり方、どれもがうまくはまりました。写真は運とタイミング。計算できるものではないので、もう二度と撮れないでしょうね。目指すのは、とにかくきれいな写真。この受賞を励みに、今度は、背景や構図など細部にも気を配っていきたいと思います。
田中俊一
5月二席
サイレンの音に気付いて見渡したところ、自宅北方から煙が上がっていました。山火事だと思い、すぐに望遠レンズを持って現場へ。赤穂では過去にも何度か山火事があったので、日没が迫る中、懸命に放水するヘリが頼もしく見えました。10年ほど趣味にしている風景写真でもなかなかうまくいかないのですが、ヘリの頑張りを伝えようと火勢や西日、放水のタイミングを考えて伝わりやすさを意識したことがよかったのだと思います。受賞の喜びの一方で、後日、焦げた山肌を見て、火災の恐ろしさを痛感しました。
コンテストの歩み半世紀に
2014年の年間賞が決まりました。事件、事故、自然の営みと、多彩なニュース写真が時代を語っています。
本コンテストの月例審査は、まもなく600回。阪神・淡路大震災直後に一時休載しましたが、読者のみなさんと一緒に世相を見つめ続けて半世紀になりました。
第1回の月例審査は1965(昭和40)年2月。夕刊掲載でしたが、県内各地から多数の応募があり、翌年から朝刊掲載になりました。当時の最優秀賞の副賞は、東京―札幌間の航空券と全天候カメラ、8ミリ映写機でした。
半世紀で環境は激変し、フィルムカメラやモノクロの写真は姿を消しつつあります。デジタル時代に、報道カメラマンのお株を奪う現場到着や写真投稿の早さに驚かされることもしばしば。報道と一般の境界が揺らぐほどの状況が生まれていますが、欲を言えば、「読コン」ではもっと生活者の視点で撮った写真も見たいと思っています。
年配者の活躍が目立った2014年の応募総数は5246点。その全てに敬意を表し、新たな1年を彩る作品を楽しみにしています。
(映像センター長 冨居雅人)
上位作品 1位票割れる混戦
2014年の年間賞審査は、月例コンテストの各一、二席計24点が候補作となった。編集局長、局次長をはじめ、部長会メンバーら12人で行った。全員が順位をつけて4作品を選び、1位に4点、2位に3点、3位に2点、4位に1点を配分して投票。1回目の審査で上位4作品が決まった。
最優秀賞に輝いたのは、常澤健壽の「雪の朝の出来事」(2月二席)。2月8日の早朝、自宅近くの神戸市北区、山陽自動車道で起きたトレーラーの横転事故を察知し、いち早く高台から撮影、本紙夕刊1面に掲載された。3人の1位票、4人の2位票を集め、他を引き離して年間賞の頂点に立った。
優秀賞には、市川彰三の「現実」(11月一席)が選ばれた。飲み込んだ釣り針を外せないカモメが哀れで、釣り人の身勝手さを訴えている作品。3人の1位票を集めた。
白石正春の「捕獲の瞬間」(2月一席)は、ミサゴが魚をつかんだ一瞬を、絶妙のタイミングで写し止め、2人から1位票を得た。奨励賞は田中俊一の「山林火災に挑む防災ヘリ」(5月二席)。炎に敢然と立ち向かうヘリコプターを写し、山火事の恐ろしさを伝えた。次点は野見山かづ代の「整列」(7月一席)だった。
(敬称略)