ホームベースから取れる距離は左翼約70メートル、右翼は60メートルほどしかない。夢野台は神戸市長田区の手狭なグラウンドを逆手に取り、個人の成長に注力する独特の練習方法を確立した。合言葉は「兵庫一狭いグラウンドから甲子園へ」。最新のデジタルツールも活用し、選手たちは手応え十分に取り組んでいる。 同校によると、グラウンド面積は1万444平方メートル。文科省が定めた高校運動場の設置基準は上回っているものの、兵庫県立高では最小レベルだ。前原克泰監督は「練習試合は必ず相手校に出かけるので、アウェーには強くなる」と笑う。 他部と併用し、グラウンドを使えるのは毎日1時間のみ、半面だけ。その他の時間はグラウンドの隅や体育館前で汗を流す。限られた時間と場所で最大の成果を得ようと、昨秋から全体練習を週2回の計2時間に限定し、その他をすべて個人練習とした。 選手と指導者をつなぐのは、アスリート用の管理アプリだ。選手は日々の食事や体調、睡眠時間、練習への意欲と強度などを詳細に記入する。前原監督は個々の選手のデータを踏まえ、毎月の面談で助言する。 打者はスイング速度や30メートル走、投手は球速の中長期的な目標を定めており、2~3週間に1度計測して達成度を確認する。秋から球速が約20キロ伸びた投手がおり、打撃面でも試合で振り遅れることが減ったという。石田勇樹主将は「一人一人が明確な課題を持ち、密度の高い練習に取り組めている」と話す。 新たな練習法でどれだけ強くなれたのか。成果をぶつける時が来た。(伊田雄馬)