祖父母の家が須磨寺の駅近くにあったので、須磨寺は子どものころからの遊び場だった。駅前の源氏書房、お蕎麦(そば)の明月さん、いずれも源氏物語の昔から月の名所で知られた由緒を踏まえていた。
須磨寺には、境内におびただしい石碑がある。芭蕉の句碑から、処女作が「須磨寺付近」というゆかりの山本周五郎の文学碑、近くに別荘を構えた文楽の名人・竹本摂津大掾(せっつのだいじょう)の句碑など、近代のものも多い。かと思うと、ボタンを押すと小学唱歌「青葉の笛」が流れる、音が出る珍しい石碑もある。訪れた人へのサービス精神に満ち満ちているのである。
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