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語り部の勉強会。互いの話を聞き、意見を述べ合う=神戸市中央区、人と防災未来センター
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語り部の勉強会。互いの話を聞き、意見を述べ合う=神戸市中央区、人と防災未来センター

語り部の勉強会。互いの話を聞き、意見を述べ合う=神戸市中央区、人と防災未来センター

語り部の勉強会。互いの話を聞き、意見を述べ合う=神戸市中央区、人と防災未来センター

 「子どもを亡くした親はどんなにつらいか。そんな思いを皆さんの親にさせないでほしい」

 阪神・淡路大震災で自宅が全壊し、長男=当時(29)=を亡くした庄野ゆき子(81)=神戸市東灘区=は、人と防災未来センター(神戸市中央区)で修学旅行生らに語りかける。

 2002年のセンター開館当初から語り部を続ける。神戸学院大学で防災教育のゼミも聴講し、知識を身につけた。震災で負傷して足が不自由になり、年々体力も低下するが、「これが私に残された仕事」と踏ん張る。

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 年間約50万人が訪れる同センターには現在、44人の語り部がいる。多くが10年以上続けるベテランで、入館者に震災のすさまじさや命の大切さを伝える役割を果たす。

 ただ、震災から20年近くがたち、「伝わりにくくなった」と感じる語り部は多い。遠方から訪れる修学旅行生は震災を全く知らず、周りに被災した人もいない。同センター企画ディレクターの平林英二(48)は「遠い昔の災害と同じような感覚。一方的な話では耳を傾けてくれない」と話す。

 平林の呼び掛けで今年6月、語り部有志による勉強会が始まった。

 「自分の経験で言える範囲は限られている」「足元の神戸で子どもに伝わっていない」「若い仲間の発掘が必要だ」。そんな意見が相次いだ。

 これまでお互いの話を聞く機会もほとんどなかった。「自己満足では、私たちの死後、この活動は終わってしまう」。語り部の一人、重元勝(69)=神戸市東灘区=は危機感をあらわにする。

 勉強会では、互いの話を聞き、話し方や内容について意見を交わす。平林は「伝えるべき内容や方法を共有財産にしていかなければ、活動は行き詰まる」と考える。

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 来年で被爆70年。体験者が減少する広島市は、2012年度から「伝承者」の養成を始めた。戦争を経験していない人々が、被爆者から証言を受け継ぎ、次の世代につなぐ取り組みだ。

 3年間の研修で、毎月1回程度、戦争や原爆の知識から話し方まで幅広く学ぶ。体験を継承する被爆者を決め、何度も会って平和への思いなどを共有していく。

 自身が経験していない出来事を、どんな語り口で、どう伝えるか。受講生の悩みは尽きない。

 明石市から参加する広島市出身の法務研修生高岡昌裕(35)は、証言を受け継ぐ2人から「『痛かった』『熱かった』だけでは耳を傾けてくれない。戦争や原爆投下の背景をしっかり伝えてほしい」と要望された。

 「証言映像ではなく、人が人に語り継ぐ意味は何か」。自問を繰り返し、3年目の研修に励む。

 阪神・淡路の被災地でも、いずれ経験者はいなくなる。震災を知らない世代に何を、どう伝えるのか。未来を見据えた取り組みが必要になる。

=敬称略=

(高田康夫)

2014/7/18
 

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