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(2)リスト作成 「助け必要な人がいる」
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30年以上、民生委員を務める荻野英子さん。リストを基に要援護者の家をシールで記した地図を作った=浜松市福祉交流センター(撮影・峰大二郎)
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30年以上、民生委員を務める荻野英子さん。リストを基に要援護者の家をシールで記した地図を作った=浜松市福祉交流センター(撮影・峰大二郎)

30年以上、民生委員を務める荻野英子さん。リストを基に要援護者の家をシールで記した地図を作った=浜松市福祉交流センター(撮影・峰大二郎)

30年以上、民生委員を務める荻野英子さん。リストを基に要援護者の家をシールで記した地図を作った=浜松市福祉交流センター(撮影・峰大二郎)

 旧北淡町では台風が近づくと、消防団員が1人暮らしの高齢者の自宅を回る。阪神・淡路大震災の前から引き継がれてきた役割だ。

 「おじいちゃん、これから風が強くなるから気いつけてや。何なら今から一緒に集会所に避難しようか」

 約130人に上る1人暮らしの高齢者名簿は消防団と民生委員が保管していた。震災では名簿をもとに、団員が手分けして自宅や避難所を回った。早い段階での高齢者の安否確認が、全町民のスムーズな確認作業につながる。町が「行方不明者ゼロ」を発表したのは、地震発生のわずか12時間後のことだった。

 「プライバシーの問題は分かるが、必要な情報は共有すべきです」

 5年前、旧北淡町の野島断層保存館の米山正幸さん(44)にそう言われ、浜松市の荻野英子さん(75)は意を強くした。

 荻野さんは現在、浜松で民生委員児童委員協議会の顧問を務める。民生委員になって34年、昨年11月まで6年間は協議会の会長を担った。

 東海地震に備える静岡県では、ほぼすべての地区に自主防災組織がある。だが荻野さんは「組織はあっても人間関係が欠けている」と懐疑的だった。「命を守るためには、それぞれの家の事情や顔を知る関係を築くことが大事だ」と思った。

 北淡町で米山さんの話を聞いたとき、荻野さんの中の漠然とした思いが確信に変わった。

 浜松に戻り、個人情報を盾に名簿づくりを渋る市を説得し、市長と直談判する。ようやく「災害時要援護者リスト」ができたのは昨年秋のことだ。高齢者や障害のある住民に協力を呼びかけ、A4判のリストを配った。

 「居間でくつろいでいたり、寝ていたり。災害はいつ起きるか分からない」。荻野さんたちは、リストに「普段いる部屋」「寝室の位置」を書く欄を設けた。こうした情報が、北淡町では生き埋めになった住民の救出につながったと聞いたからだ。

 回収すると「1人で歩けない」「障害があり意思表示が困難」などの書き込みがあった。本人の同意が得られれば家の間取りも記載した。

 リストは民生委員と自主防災組織が預かる。個人情報が詰まるだけに慎重な取り扱いが求められる。それでも「身近なところに助けを必要とする人がいる」という意識を共有することで、住民のつながりが深まるはず。

 荻野さんは信じている。

    ◆

 震源地の風に背中を押された人の中に、防災の研究者がいる。各地で災害に強いまちづくりを呼びかける。その姿を追った。(三島大一郎)

2011/1/13
 

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