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(15)空港の役割 「空の防災拠点に」と市
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 審議は一時間足らずで終わった。採決は賛成三に、反対十。五月十八日の神戸市会空港特別委員会は、「空港は復興に必要」との理由で、計画の手続き凍結を求める請願を不採択にした。

 請願を出した市民グループ「神戸空港を考える会」は、環境問題などから一貫して計画に反対してきた。着工につながる「着工準備調査費」が国の九五年度予算で認められたのは、昨年末。それからわずか三週間後に震災は起きた。

 「今なお三万五千人が、避難所で不自由な生活をしている。計画の推進は、市民感情への理解が欠如している」と、請願は市の姿勢を批判した。

 震災後、笹山幸俊市長は、これまで通り空港を推進する考えを表明。三月に発表した九五年度市当初予算案で、関連調査費四億円を計上した。ポートアイランド沖を埋め立て、二千五百メートルの滑走路を整備する。二〇〇三年開港を目指し、総事業費約三千億円を見込む。

 予算発表の記者会見で、同市長は「都市基盤として大事な施設。運輸省の認証もいただいている。やめるのは逆」と強調した。

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 震災直後、医薬品などをヘリコプターが空港から被災地に運んだ。救援部隊、緊急物資の多くが関西、大阪空港を経由した。

 市空港整備本部の矢田立郎本部長は「危機管理という意味で、空港は都市の防災機能を果たした」と振り返る。鉄道、道路が寸断された状態では、空路が頼りだった。海上ルートは大量の物資が運べるが、スピードに劣った。

 市は「空の体制がより必要になった」と説明。この二十六日、明らかにした復興計画案は、空港を空の防災拠点とも位置付け、「五年以内に実施する事業」に盛り込んだ。

 運輸省航空局は、空港機能活用のため、前提となる耐震性を検討、夏ごろには中間報告をまとめる予定だ。事業費の増大を懸念する声もあるが、同省は「既存の空港の改修とは違い、新設は耐震対策が即、コストアップにつながらない」との見方を示した。

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 五月二十二日、海上保安庁海洋研究室の岩渕洋・主任研究官は大阪湾の調査結果を地震予知連に報告した。一月下旬から二月末までの音波調査で、新たな活断層六本を確認した。

 うち一本は、ポートアイランド沖から、淡路島に平行する形で延びる。総延長約三十五キロ。空港計画の予定地を活断層が走る。

 「まだ断層の分布状態しかとらえていない。危ないのかどうかは、さらに調査する必要がある」と、この夏には、詳しい調査を実施する予定。独自の地盤調査も決めた市は「日本の街づくりは活断層との戦いだった。それに耐えうるものをつくる」とも言う。

 空港建設に向け、市は七月以降、港湾計画への組み入れ、飛行場設置許可の申請などの手続きを進める。矢田本部長は「十年、二十年先を見なければ、街づくりはできないのではないか」と、逆に問い掛けた。

 市は空港の埋め立て地を企業に分譲するなどし、事業費圧縮を図る考えだが、一歩間違えると、ただでさえ復興で財政が厳しい時、市民に大きな負担を強いることになりかねない。

 「住宅整備など問題が山積する中で、なぜ空港をつくるのか」。そんな声もある。六月二日の告示まで、あと二日に迫る神戸市議選は、一つの試金石になる。

1995/5/31

 

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