急激な拡大路線の陰で巨額の借金を抱えたダイエーは、1990年代のバブル経済崩壊に阪神・淡路大震災が追い打ちをかけ、深刻な経営不振に陥った。金融機関の不良債権処理問題もからみ自主再建の道を絶たれた後、2004年に産業再生機構の支援を受け、最終的にライバルであるイオンの傘下に入る。中内功氏は02年の退任後は流通科学大(神戸市西区)学園長として、05年に亡くなるまで「流通革命」の旗を振った。三十余年にわたる親交があった経営学者の田村正紀神戸大名誉教授(82)の目に経営危機はどう映り、今、何を思うかを尋ねた。(聞き手=村上早百合)
ある晩、元住友銀行役員でダイエーグループにいた鈴木雍(よう)さんに誘われて、大阪の料亭に行ったんです。和室の襖(ふすま)を開けたら、グループの幹部20人ぐらいがずらっと頭を下げてた。1993年ごろだったかな。何事かと驚きましたよ。要するに「今の経営はリスクがあって心配してる」と、中内さんに伝えてほしいということでした。
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