２０２２年、西の学生長距離界をリードしたのは関西学院大（兵庫県西宮市）だった。駅伝でも強豪ぞろいの関東勢に割って入る力を秘めるチームは、今春からともに４年となる守屋和希（２１）＝県西宮高出身＝と田中優樹（２０）＝報徳高出身＝に、主軸としての期待が高まる。中高時代にそれぞれ実績を積み、大学で切磋琢磨（せっさたくま）する２人は「一緒に関学を引っ張り、兵庫を盛り上げる」と頼もしい。

　関学大は２２年シーズン、出雲全日本大学選抜駅伝（出雲駅伝）で１０位、全日本大学駅伝で１６位と、関東勢を除くと最上位だった。関西一を決める丹後大学駅伝兼関西学生対校駅伝でも５年ぶりの優勝を果たした。

　ただ今春には、２１年の日本学生対校選手権で日本人トップの５位、丹後駅伝では３年連続区間新とけん引した４年上田颯汰が卒業する。新チームは、経験を積んできた守屋や田中らが中心となる。

■中高で活躍、大学でも１年目から主力に

　２人は中高時代、駅伝で各校の主力として活躍してきた。守屋は西宮市立深津中時代に県中学校新人駅伝５区区間賞、田中は三田市立長坂中時代に県中学校駅伝１区５位と好走した。

　高校３年時には県高校駅伝１区（１０キロ）で直接対決。報徳高の田中が３０分３２秒の３位で先着し、県西宮高の守屋は４３秒遅れの５位だった。トラック５０００メートルの自己ベストは田中が１４分２２秒６８、守屋が１４分４１秒２１だった。

　そろって入学した関学大では１年目から主力となった。田中は秋の関西学生対校選手権１万メートルで優勝を飾った。全日本大学駅伝では田中が１区２４位、守屋が４区区間１６位だった。

　２年の春も順当に結果を残した。守屋が関西学生対校選手権ハーフマラソンで優勝し、田中は関西学生チャンピオンシップ１万メートルで栄冠。だが、秋からの１年間は明暗が分かれた。

■２年秋から明暗、１年後にそろい踏み

　守屋は神戸三田キャンパス（三田市）の理工学部に所属し、新型コロナウイルス禍でオンライン授業を受けながら、自主練習にも取り組んだ。「関学の雰囲気が性に合っていた」という環境で成長を遂げた。

　２年秋には初出場の出雲駅伝で３区区間８位と好走し、出場２度目の全日本大学駅伝では最長区間のアンカー８区で区間１１位に。「（当時として）１００パーセントの走りができた」といい、さらなる飛躍へつなげた。

　３年春の関西学生対校ハーフマラソンでは後続に１分差をつける１時間４分４７秒で２連覇した。夏に強豪実業団の合宿に個人で参加して意識が向上。出雲駅伝では１区で先頭と１８秒差の４位でつなぎ、関東勢７校のランナーや留学生を上回って存在感をアピール。１１月の日体大記録会１万メートルでは、前年から１分以上縮める２８分３０秒４６をマークした。

　一方、田中は２年秋に左脚アキレス腱（けん）を痛め、全日本、出雲の両駅伝を走れなかった。約４カ月の離脱を経て、３年春に練習を再開。関西学生対校選手権１万メートルはチームメートの上田、守屋に次ぐ３位にまとめた。だが、冬場に練習を積めなかった影響が出て、その後再び不調に陥った。

　本格復帰したのは秋になってから。２年ぶりに出場した全日本大学駅伝は５区区間１９位だったが、丹後大学駅伝ではアンカー８区で区間賞に輝き、優勝のゴールテープを切った。

■箱根駅伝への心境複雑、故郷から飛躍誓う

　来年の第１００回東京箱根間往復大学駅伝（箱根駅伝）では、予選会に全国の大学が参加可能となるが、２人の思いは複雑だ。

　１年生から全日本、出雲の両駅伝に計５度出場した守屋は「現時点では全日本、出雲の区間距離に近い１万メートルで、２７分台を目指して頑張りたい」と語る。箱根駅伝は「本気で目指す学生の思いがあるから大会の価値がある」とし、出場へのこだわりはないという。

　中高時代から箱根駅伝に憧れた田中も「思い出づくりの気持ちでは関東の選手とは戦えないので、簡単に走りたいと言えない」とする。ただ、２０キロを走る力をつける練習には肯定的だ。２人とも「出られるのであれば出たい」との思いは共通する。

　トラックシーズンを前に、２月５日に兵庫県加古川市であった県郡市区対抗駅伝では、ともに４区を駆け抜けた。西宮市で初出場した守屋は左膝の故障明けながら、先頭でたすきを受けると区間２位の快走で、６年ぶりの優勝に貢献した。「地元の力になれて良かった」と喜んだ。三田市で区間６位だった田中も「状態は７、８割まで戻ってきた」とうなずく。

　お互いについて、田中は「厳格でわが道を行き、常に正しく皆をいい方向に導いていく」と評し、守屋は「あいつが走ってくれれば関学は上向く。精神的支柱」と信頼を寄せる。２人が本領を発揮したとき、関学を象徴する新月のユニホームが一層輝きを増す。