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新型コロナ禍で高校野球生活を送った神戸弘陵学園高女子硬式野球部の3年生=神戸市北区山田町小部の同校グラウンド
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新型コロナ禍で高校野球生活を送った神戸弘陵学園高女子硬式野球部の3年生=神戸市北区山田町小部の同校グラウンド
全日本女子硬式野球選手権で、いきいきとした表情を見せる神戸弘陵学園高ナイン=10月、松山市のマドンナスタジアム(同校提供)
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全日本女子硬式野球選手権で、いきいきとした表情を見せる神戸弘陵学園高ナイン=10月、松山市のマドンナスタジアム(同校提供)

 未曽有の高校野球生活を有終の美で飾った。神戸弘陵学園高(神戸市北区)女子硬式野球部の3年生。優勝候補の代表格と目され、臨んだ夏の選手権は新型コロナウイルス禍で途中辞退に追い込まれた。一度は引退したが、突如出場権が舞い込んだ社会人も集う大会で、高校生では異例の決勝進出。優勝こそ逃したが、「勝敗がついて終われた」とナインの表情は一様にすがすがしい。

 硬式の女子高校野球は、新チームで戦う晩夏のユース▽春の選抜▽夏の選手権-の三大大会が中心。2014年創部の神戸弘陵は、今年のユースを含め日本一に9回輝いた。その名門を築いた石原康司監督(62)が「歴代1、2」と期待したのが現3年生だ。屈指の左腕日高結衣ら下級生からの主力も多く、昨年は初めて決勝が甲子園球場で開かれた選手権で優勝を経験。直後のユースも制した。

 今春の選抜は東京ドームでの決勝まで進んだが準優勝。当時主将の正代絢子は「夏は絶対勝とうと、火がついた」といい、ミーティングを増やし選手の意識を高めた。捕手の安藤蓮姫(はずき)は守備の連係を改善し、日高の新球種習得も支えた。チームは、練習試合で男子中学生の強豪を破るなど好調のまま、集大成の夏を迎えた。

 7月に丹波市内で開幕した選手権では順当に8強まで進んだ。しかし、チーム内で感染が拡大。準々決勝の朝、宿舎の駐車場で出場辞退が告げられ、選手は泣き崩れた。寮住まいが多く、すぐに帰省を強いられた。3年生はこのまま引退-。感染防止のため、セレモニーどころか、会話も記念撮影も控えさせられた。

 正代はあらゆる大会が中止されたコロナ禍の初年と重ね、「『あんな終わり方は嫌』と思ったけど、まさか自分たちも…」。予想外の幕切れに泣くしかなかった。

 2学期に入り、転機が訪れる。企業チームや大学なども出場する「全日本女子選手権」への参戦を急きょ打診された。願ってもない朗報。ただ、受験など新たな進路を歩み始めた生徒もいる。石原監督はおのおのに判断を委ね、3年生23人中17人が復帰を決めた。

 本番では全国制覇の経験がある企業クラブ、強豪大学などを倒し準優勝。高レベルの大会で高校生ではまれな好成績だが、日高は「舞台を与えてもらえたことがうれしかった」と感謝した。

 特別な思いは、レギュラー選手だけではない。けがや下級生の台頭で出場機会が少なかった松浦咲花(さくら)。ラストチャンスに懸け、練習では誰より声を出し、アピールしてきたが最後の夏は打ち切られた。「ショックで何も考えられなかった」

 そこに全日本の出場が転がり込んだ。決勝で松浦は代打に立ち、敵失から二塁を陥れ、4点差を追い付く流れを呼び込んだ。最後の試合で存在感を示し「悔いのない終わり方ができた。くじけずやってきて良かった」。

 「勝ち負けはどうでも良かった。グラウンドで終わらせられたことが大事だった」と石原監督。ほっとしたような、名将の表情が印象的だった。

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