東北の方々は情が厚く、一度知り合ったら声をかけてくださることが増えた。

 宮城県石巻市雄勝町は、こぢんまりとした町だからこそ、私たちの存在はすぐに知られるようになった。

 あいさつをしに行くと「上がってけ!」とお茶っこ(お茶会)が始まり、その日の漁で採れた海の幸を出してくれたり、キンキンに冷えたペットボトルを持たせてくれたり。

 夕食を作って待ってくれることもあり、そんな雄勝町の方々のあたたかい思いやりに、逆に私が元気をいただくことも多かった。

石巻市の北上川からのぞむ夕日(提供)

 「この子に会ってほしい」と、震災後に不登校になった中学生を紹介してもらったこともある。週に1度、一緒に過ごす時間をつくらせていただいた。

 雄勝町で活動していた半年間、娘のようにかわいがってくれた大好きなお父さんとお母さん。私にとって、雄勝は「第二の故郷」と言えるまでになった。

 早朝には漁のお手伝いに連れて行ってもらい、ホタテやホヤ、ワカメの収穫や袋詰めをさせていただいた。休憩のときには缶コーヒーを飲んで、たわいもない話をしながら海を眺める時間が好きだった。

 時には、泊まらせてもらうこともあり、実家にいるような気持ちで過ごさせていただいた。

 海の幸に恵まれた漁村である雄勝町で養殖にふれ、東北の食の魅力にも心を動かされ、もっと多くの人に東北の魅力を伝えたいという思いがあふれた半年間でもあった。

 全国から来るボランティアの受け入れ対応をすることもあり、私が雄勝町について紹介をする時は、地元の人の声を多く届けることを大切にしていた。

 雄勝町に訪れてくださる方に、私が語りを届けることで、その方がまたどこかで東北を語ってくれる。そんな「つながり」をつくっていきたいと思った。

 雄勝町で、私自身がどこまで力になれたかは分からないけれど、兵庫から応援している大学生がいると思ってもらえることで、何か気持ちの支えになれたら、という思いだった。

東北への思いを語る小島汀さん=神戸市中央区加納町6

 私が住んでいた半年間、高校の先輩や友人が訪ねてきてくれることもあり、その時は、雄勝町の大切な人やお店を紹介した。私にとって大切な人が、雄勝町にふれてくれることがうれしかった。

 今でも訪れると、「おかえり」と言って迎えてくれる家族がいる。雄勝町の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい。第二の故郷は、あたたかくて大好きな町だ。(小島 汀)