私(28)は阪神・淡路大震災が発生した1995年の12月に生まれた。先輩記者と震災や防災について話し合う場では、話題についていけなかったり、意見していいのか気後れしたり。落ち込むたび、どこかで「震災後生まれだから」と言い訳しそうになる自分がいた。迷いの中、昨秋神戸で開かれた「1・17伝承合宿」に申し込んだ。
29年前の震災を後世にどう伝えていくか。合宿はNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯り(HANDS)」が開いた。講師はコミュニティ・サポートセンター神戸の中村順子理事長(77)や磯辺康子神戸大特命准教授(59)、室崎益輝神戸大名誉教授(79)ら、長年被災者支援やまちづくりに取り組んできた8人が務めた。
参加者の顔合わせで驚いた。10代の学生や入社数年の全国紙記者ら、私より年下が多い。同じ震災後生まれでも30年の幅がある。いつまで「伝えてもらう側」と甘えていられるのだろう…。「伝承」の言葉が、自分事として響いた。
地域で奔走してきた講師たちが活動の原点を振り返る。「水が出なくて」「近所の人が困っていたから」。どれも素朴で、参加者らから敬意を込めて「レジェンド」と呼ばれる講師陣がぐっと身近に感じられた。
「経験していないと語れない?」。私も含め、同じような悩みや葛藤を口にする10、20代の背中を、磯辺神戸大特命准教授が押した。「震災を発信する人が多様になれば、いろんな側面を伝えられる」
2日間で学んだのは世代に関係なく、それぞれの人生や問題意識に結び付け、「震災を語っていい」ということ。それが次の災害から大切な人の命を守ることにつながる。「95年生まれ」を言い訳でなく、行動の原動力にしたい。(名倉あかり)