「日本人ファースト」を掲げた昨年夏の参院選に続き、参政党は衆院選でも議席数を15まで増やし、兵庫県では、比例復活当選によって初の議席獲得を果たした。自民党の高市早苗首相の人気に押され、埋没の可能性があった中で13議席を上積み。党の顔である神谷宗幣代表の選挙戦を陰で支えたのが「政治初心者」を自認する地方党員たちだ。議員の発言や政策を巡って批判を受けながらも、政治に無関心だった層を引きつけて拡大する新興政党は、解散総選挙を経て、どこへ向かうのか。(衆院選取材班)

■三宮に聴衆殺到、「胸のすく演説」

選挙戦終盤の夜、街頭演説をする神谷宗幣代表。兵庫1区から立候補した原弥彦氏(左)とともに選挙カーの上に立った=2月6日、神戸市中央区

 2月6日夜、路面店の照明や街路樹の電飾で輝く神戸・三宮センター街東口に、歩行者の通行が滞留するほどの聴衆が詰めかけていた。選挙戦11日目。期間中2度目の兵庫入りをした神谷代表の声を聞くためだった。

 「高学歴の人ばっかり集めて日本良くなるんですか。ならないよ。彼らはエリート意識高いもん。普通の人たちを違う目で見ているからね」

 拳を振り聴衆の熱量を高めながら、減税や移民の制限、労働規制の緩和、子ども1人に月10万円支給といった公約を主張。自らを「たたき上げ」と表現すると、こう続けた。

 「エリートよりも一般国民の方が数が多い。その人たちが政治の大切さに気づき、少しずつ動けば日本を変えられる可能性があると思ってつくったのが参政党です」

 会場には参院選と同様に、「極右」「レイシスト」などのプラカードを手にやじを飛ばす人たちも集まった。神谷代表は、男女共同参画や選択的夫婦別姓、性的少数者への理解推進への反対を表明した場面で、「男は男、女は女。以上、終わり!」と言い放ち、抗議者をあおった。

 「これ言うと、左翼が発狂するんですよ。もっと発狂しろ。気合が足りん。腹の底から声を出せ!」

 笑いとともに拍手する聴衆。兵庫県入りした主要政党の党首や幹部の演説を現場で聞き比べたという神戸市内の男性(21)は「政策の内容に具体性がないと思いました。でも、演説はうまい」と感心した様子だった。

 神谷代表は前日に京都で、ジェンダー平等と共産主義を結びつける発言をして新聞記事になったが、本人に悪びれる気配はない。県内の党関係者によると、自信にあふれる口調について、街頭活動時に「言いたいことを言ってくれ、すっきりする」「分かりやすい」との声が寄せられるそうだ。

■欧州の右派政党と親和性

神谷宗幣代表の演説に対し、大声で反対の意思を示す「カウンター」と呼ばれる人たち。「極右」「ヘイト集団」などのサインを掲げていた=2月6日、神戸市中央区

 歴史や統計、社会制度に関する神谷代表の発信は、事実誤認やミスリーディングな内容を含むとして、たびたび報道機関のファクトチェックの対象にされてきた。「排外主義」「非科学的」といった指摘を受けることもある。

 2月8日に投開票を終えた衆院選では、神谷代表は男女共同参画のあり方以外に、二酸化炭素(CO2)が地球温暖化の原因になるという科学的知見を疑問視。科学者の世界的合意や、脱炭素の動きに不信感を示した。

 候補者も代表の主張を踏襲した。神戸の都心を選挙区とする兵庫1区の公認候補者だった原弥彦氏(43)は演説で「外国人が増え、夜道を歩けない国になる」と繰り返し強調した。昨年夏の参院選以来、現実の統計データとの不整合が何度も指摘されている言説だ。

 マイクを握ると、彼らの言う「エリート」の見解や立場を疑う姿勢を隠さない。根底には、党の旗印である「反グローバリズム」の考え方がある。貧困や格差をもたらすとして、多国籍企業や外国人移民に対し、国家が一定の規制をかける考えだ。

 神谷代表の言葉では、「多国籍企業や投資家が数百年かけて仕組みをつくった支配」の結果が今の日本の経済状況で、既存の政治家やメディアは「みんな金に転ぶ」。一方の参政党は「圧力をかけられようが、妨害されようが、闘うのみ」とする。

 党への批判は「参政党対グローバリスト」の構図に当てはめるように回収され、党の主張を正当化し、強化する材料になる。「日本人ファースト」に対する物議を含め、参政党が非難されるのは「国民が目覚めて政治に関わるのを嫌がる人たちがいる」からだという。

 反移民を訴える態度は、欧州の右派ポピュリスト政党とも通じる。党幹部同士の会談も行っている。

 水島治郎・千葉大教授の著書「ポピュリズムとは何か」(中公新書、2016年)によれば、欧州のポピュリズムの本質はリベラルか保守かという「左右」ではなく、「下から」の運動にある。

 「ポピュリズム勢力は、既成政治から見捨てられた人々の守り手を任じ、自らを『真の民主主義』の担い手と称しつつ、エリート層を既得権益にすがる存在として断罪することで、『下』の強い支持を獲得している」(1章、9ページ)

 自民党との「岩盤保守層」の奪い合いが想定された今回の衆院選。それらの層の支持が高市早苗首相、高市政権へと回帰する中、参政党は無党派層や無関心層を重視する戦略を採ったように映る。候補者たちは12日間、「選挙に行かない人たち」に向け、投票率アップを呼びかけ続けた。

■衆院選で190人を擁立

チラシを手に街頭演説を聞く聴衆=1月31日、兵庫県宝塚市内

 突然の解散総選挙にかかわらず、参政党は自民、中道改革連合に次ぐ190人を擁立した。増え続ける党員がその供給源だ。

 昨年夏の参院選で参政党は議席数を15に増やし、比例の得票は自民党、国民民主党に次ぐ740万票に達した。現在の党員・サポーターの数は公称で10万人。知名度が高まり、党員らは数は兵庫県内でも右肩上がりという。

 衆院選兵庫10区の公認候補だった藤原誠也氏(37)は、参院選でも参政党から立候補していた。「衆院選では、SNSに関心のなさそうな高齢者でも『知っている』と声をかけてくれるようになった」と、半年での変化を語った。

 県内の党員・サポーターは参院選時に2千人だったが、現在は3千人(内訳は非公表)。党ホームページによれば地方議員は約180人、兵庫県内でも尼崎市、姫路市、川西市、市川町と計4人の議員がいる。

 「選挙の有無に関係なく、普段から街頭に立っている。(突然の解散があっても)準備はできていた」と藤原氏。その言葉通り、兵庫では藤原氏ら国政選挙の経験者を含む25~53歳の6人が出馬。職業は建築士、オペラ歌手、会社員、団体職員など。全員が政治経験のない新人だ。

 初めての国政選挙に臨んだ兵庫1区の原氏は、学生時代からずっとフィットネス業界で働く。参政党に出合うまでは「なんか難しい」と政治に関心がなかった。演説ではその点をアピール材料にした。1月27日の公示日、神戸市東灘区の駅前で第一声を行った原氏は、たどたどしい口調で言った。

 「本当は偏差値の高い大人たち、頭が良い方たちに任せたら良かったですけど、その結果がこれじゃないですか。だから僕たちがこうやって立ち上がっているんですね。できれば頭のいい人たちにお願いしたい。でも、ここまで来たらやるしかないの、僕たちが」

 原氏の陣営は初日のうちに選挙ポスターを全て貼り終えた。「ウグイスも含め、勉強し合いながら手弁当でやっている」と選挙スタッフたちは胸を張った。彼らも自らを「初心者」と表現する。

■代表のカリスマ性と「学び」が両輪

 各党党首の派手な政治論争の足元で、地方に足場を築いている参政党。「われわれはインターネットでつくった政党だ」。神谷代表は、各地の演説でそう繰り返す。

 政党交付金のほかは寄付と党費で運営しているとし、直近のクラウドファンディング(1月21日~2月8日)では1億5千万円以上を集めた。「何のバックも、宗教団体も企業もついていない。だから、何でもタブーなく言える」と持論を述べる。

 参議院の公式サイトなどによると、神谷代表は大阪府吹田市議を経て、2013年に「イシキカイカク株式会社」を設立し、講演活動やインターネット番組配信に取り組んできた。結党は20年4月。約2800人でスタートしたという。

 「最初は『オーガニック右翼』って呼ばれてましたからね」。初期から在籍する県内党員は振り返る。

 政治、経済、歴史のほかに新型コロナウイルスワクチン反対や有機農業、健康法など、参政党の扱う話題は幅広く、党員たちの関心はそれぞれ違った。「だから学び合える。勉強する中で『日本ってこんな国やったんか』と思うことが多々あった」という。

 一方で、見解の相違などを理由に、党の中心的な存在であるボードメンバーがたびたび交代。神谷代表が存在感を高めていった。

 兵庫1区候補者の原氏のほか、6区の谷浩一郎氏(44)、10区の藤原氏は、入党のきっかけに「神谷代表の演説を動画で見たこと」を挙げる。7区の酒井遼氏(25)は、神谷代表が開いていたセミナーで「学校が教えてくれない戦争の真実」に接し、人生が変わったという。

 熱心な支持者を増やす上で、トップのカリスマ性とグループの「学び」を両輪にしているのは明らかだ。

 参政党は3月に東京で政治資金パーティーを予定する。催しの名前は「参政党フェス」で、プログラムは国歌斉唱やゲスト講演、演説会、お笑いステージなど。告知チラシにはタキシード姿の代表の写真に加え、「知的好奇心が動き出す」「仲間とのつながり」といった文言が並ぶ。

 参加費は「SS席」20万円、「A席」5万円などで、神谷代表のキーホルダーや握手会、サイン色紙などの特典が用意されている。パーティーのほかにも、党主催の講座「DIYスクール」などを開催している。

「フェス」と銘打った政治資金パーティーの告知チラシ。「知的好奇心」や「仲間とのつながり」を強調している

■組織運営や選挙戦略は神谷代表に依存

 衆院選の候補者たちは「自分たちもかつては政治に無関心だった」と街頭で訴え、通行人たちに意識の変革を求めた。自身が参政党との出合いで経験した気づきの感覚を、有権者にも促すかのように。