ひょうご経済プラスTOP 経済 地球に優しいコーヒーへ「グリーン焙煎」 抽出かすを燃料に再利用、CO2排出実質ゼロ

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地球に優しいコーヒーへ「グリーン焙煎」 抽出かすを燃料に再利用、CO2排出実質ゼロ

2022.05.11
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コーヒーの抽出かすを固めたバイオコークス=神戸市東灘区深江浜町、関西アライドコーヒーロースターズ

コーヒーの抽出かすを固めたバイオコークス=神戸市東灘区深江浜町、関西アライドコーヒーロースターズ

炉の中で燃えるバイオコークス=神戸市東灘区深江浜町、関西アライドコーヒーロースターズ

炉の中で燃えるバイオコークス=神戸市東灘区深江浜町、関西アライドコーヒーロースターズ

バイオコークスで焙煎したコーヒー豆=神戸市東灘区深江浜町、関西アライドコーヒーロースターズ

バイオコークスで焙煎したコーヒー豆=神戸市東灘区深江浜町、関西アライドコーヒーロースターズ

コーヒー抽出かすのバイオコークスで焙煎した「地球にやさしいモカブレンド」(石光商事提供)

コーヒー抽出かすのバイオコークスで焙煎した「地球にやさしいモカブレンド」(石光商事提供)

バイオコークスに次ぐ燃料として焙煎実験を始める「コーヒーペレット」(石光商事提供)

バイオコークスに次ぐ燃料として焙煎実験を始める「コーヒーペレット」(石光商事提供)

 コーヒー加工の関西アライドコーヒーロースターズ(神戸市東灘区)が、コーヒー商品生産の脱炭素化に取り組んでいる。コーヒーをこした後の残りかすの燃料化に成功し、二酸化炭素(CO2)の排出実質ゼロの新商品を発売。親会社の石光商事(同市灘区)と共同で、あらゆる焙煎過程の脱炭素化とエネルギーの循環を目指す「グリーン焙煎」の新工場を小野市に建設する。(高見雄樹)

■近大発の技術生かし新商品発売

 コーヒーの抽出かすの再利用は、飲料メーカーにとって古くからの課題だった。水分が重さの60~70%を占めるため効率的な脱水が必要で、多くは産業廃棄物として処理されてきた。

 ところが、国連の持続可能な開発目標「SDGs」の浸透で流れが変わった。関西アライドは2019年に近畿大学と連携。同大の井田民男教授が開発した技術を生かし、抽出かすを固形燃料「バイオコークス」に加工した。

 現在は飲料メーカーからかすを集め、滋賀県内でバイオコークスに加工する。神戸の本社工場にある炭焼きコーヒー用の釜に入れて焙煎する。植物由来の燃料から排出されるCO2は、その植物が成長過程で吸収したCO2と相殺され、排出は実質ゼロとみなされる。

 同社はコーヒー生豆など食品の輸出入を手掛ける石光商事の子会社。ガスや炭で豆を焼き、家庭や業務用のコーヒーを販売する。流通・外食大手や飲料メーカーのブランドによる生産(OEM)も受注する。

 バイオコークスで焼いた新商品「地球にやさしいモカブレンド」は、昨年末に石光商事オンラインストアで発売し、20杯分のドリップバッグが税込み1400円。手間がかかる分、価格は高いが、脱炭素に向けた価値を打ち出す。

 関西アライドの石崎昇社長(48)は「脱炭素への関心が急速に高まったからこそできた商品。バイオコークスは既存設備で使えるので、中小の業者にも供給していきたい」と話す。

■環境省が開発補助、小野に新工場も

 同社はさらに、抽出かすを粒状の固形燃料にする研究にも取りかかる。粒状にすることで熱効率が良くなる一方、製造コストが下がるという。抽出かすの乾燥機や専用焙煎機の開発も進める。

 21、22年度の環境省の補助事業に選ばれ、機械メーカーなどの中小企業8社と小型機を使った実証実験の真っ最中。22年度中に新たな製造システムを完成させる計画だ。石光商事と共同で、既に小野市の産業団地に2ヘクタールの工場用地を確保し、総額22億円を投じて新工場を建設する。

 石崎社長は「焙煎の脱炭素化を普及させようと、中小企業が知恵を出し合っている。完成したら多くの事業者に使ってほしい」と力を込めた。