ひょうご「新聞感想文コンクール」

思いをつなぐ使命

桑野 葵(くわの・あおい)
 神戸山手女子高3年

「広島への原爆投下から、今日でちょうど76年になります……。」
朝のニュースを見て初めて、私は今日が8月6日であることに気付いた。しかし、次の日に新聞を読んで、平和に慣れきった自分自身を恥じた。

「私たちには使命があります」
広島の平和式典に子ども代表として参加した小学生が読み上げた「平和への誓い」は、こう始まる。あの日起こった悲惨な出来事や被爆者の思いを知り、考え、平和の尊さや大切さを世界中の人々や次の世代に伝える、使命。貴方はその使命を、果たせますか、と胸に突きつけられたようだった。そして、その問いに「はい」とは即答できなかった。

私には8月6日を忘れる理由がたくさんあった。受験生だから勉強しないといけないとか、部活をもうすぐ引退するから頑張らないといけないとか、家事を手伝わないといけないとか。時間に追われているようで毎日が忙しかった。原爆や戦争のことは、学校の平和学習やテレビで聞き飽きてもいた。私は自分が8月6日を忘れていたことに、少しの危機感も罪悪感も覚えていなかったのである。

「本当の別れは会えなくなることではなく、忘れてしまうこと」
私の心を見透かすような言葉を読んで、思わず自分の行いを振り返った。そして、今年の原爆の日に黙祷しなかったことを思い出し、慌てて鉛筆を置いて、目を閉じた。これまで「想像もできないようなこと」だった原爆とその被害。しかし、私はそれらを知り、未来へ受け継がなければならないのだと思うと、初めて「想像できないこと」がはっきりと瞼の裏に浮かんできた。
「忘れていたこと、許して下さい。空が光るって、肌が焼けるって、どんな風でしょう。つい昨日まで一緒にいた人が、今日はいないとき、自分の命が消えるのを感じるとき、どうしたらいいんですか」
〝被爆者〟にではなく、あの日確かに生きていた誰かの御霊に、そう語りかけた。目を開けたとき、いつもの世界は全く違って見えた。

今まで私は、原爆の残虐性や被害の規模、投下に至る経緯等は学んできたが、そこにいた人、一人一人の悲しみにまで思いが至っていなかったのではないだろうか。広島・長崎の後にも、世界中で戦争があった。私はその度、死者数や戦費といった数字を見てその戦争を知ったつもりになっていた。しかし、これまでの全ての戦争の後ろには、人がいた。そして悲しみがあった。何万人規模の被害が出るから、何ヘクタールが焼けるから、戦争をしてはいけないのではない。無数の悲しみを生むから、戦争は絶対にしてはならないのである。過去の戦争を忘れないことは、その悲しみを忘れないことだ。
「僕ら若人の力によって、きっと平和な社会を築き上げてみせる」
広島の決意を、私も持ち続けると誓った。

(8月7日付の神戸新聞・朝刊から)

神戸新聞社賞
部門 受賞者
学校名・学年
作品の題名
神戸新聞社賞 小学校
1・2年
遠藤 実穂
西脇市立重春小学校・1年
わくわくのみずたまいっぱい
小学校
3・4年
宮崎 りの
たつの市立揖保小学校・3年
土用の丑とSDGs
小学校
5・6年
小柳 暖乃
神戸市立井吹の丘小学校・5年
サル社会 初の「女性トップ」
中学生 河野 克彦
蒼開中学校・1年
アフガン政権崩壊とぼくの国際支援
高校生 桑野 葵
神戸山手女子高等学校・3年
思いをつなぐ使命
兵庫県知事賞
部門 受賞者
学校名・学年
作品の題名
兵庫県知事賞 小学校
1・2年
有本 眞麻
関西学院初等部・2年
わたしもやくに立てるかな
小学校
3・4年
前中 愛美
神戸海星女子学院小・4年
障がいがある子もない子も遊べる「インクルーシブ遊具」広がる
小学校
5・6年
原田 京珠
神戸市立舞多聞小学校・6年
「あの日を背負って」を読んで
中学生 志賀 〓音 
(注)〓は「伶」のつくりの下が「マ」
賢明女子学院中・3年
シンコと共に生きる
高校生 片瀬 奏磨
報徳学園高・2年
長崎を最後の被爆地に

学校賞

学校賞
学校賞
  • ・神戸市立伊川谷小学校
  • ・たつの市立小宅小学校
  • ・関西学院中学部
  • ・多可町立八千代中学校
  • ・兵庫県立津名高等学校

▽小学校1・2年

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 神戸市立舞多聞小学校2年 塩沢 奈央 せかいのこどもたち
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
神戸市立井吹東小学校1年 和田 創暉 にっこにこえがおのひとがふえますように
神戸海星女子学院小学校2年 白井 星名 アップリサイクルをひろめよう
入選
入選 神戸市立御影北小学校1年 水崎 寛太 きょうはくせいしょうがいについて
神戸海星女子学院小学校1年 田中 瑞希 おうえんのちから
多可町立八千代小学校1年 島田 真帆 SDGsをひろめよう!
神戸市立若草小学校2年 澤田 直良 ごみのゆくえ
加古川市立東神吉小学校2年 細川 柊羽 イチゴパンツ

▽小学校3・4年

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 仁川学院小学校4年 山川 初菜 未来ある子供達
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
神戸市立舞多聞小学校4年 三輪 奈那佳 それぞれちがうたまご守りさくせん
高砂市立伊保南小学校4年 石井 彩心 砕けて見つけるステップアップのかぎ
入選
入選 神戸市立舞多聞小学校3年 井上 莉歩 自ぜんさいがいにそなえて考えたこと
神戸市立泉台小学校3年 首藤 彩愛 ロボットカフェ
姫路市立白鷺小中学校3年 中村 起一郎 タイピングをつづけて
加古川市立氷丘小学校4年 高橋 歩実 涙の理由 平和に感しゃ
多可町立八千代小学校4年 島田 大生 赤とんぼ

▽小学校5・6年

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 神戸市立櫨谷小学校5年 神木 栞 発想の素晴らしさ
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
神戸市立白川小学校6年 西脇 武蔵 被災地の為にできること
豊岡市立日高小学校6年 西岡 咲瑛 「戦禍継承オンライン」を読んで
入選
入選 甲南小学校5年 井野上 碧泉 心に刻んだ三つ目の顔
加東市立東条学園小中学校5年 金次 大珠 「田んぼダム」で地域を守ろう
姫路市立豊富小中学校5年 出口 優空 自分が今できること
神戸海星女子学院小学校6年 坂東 咲耶 動物と生きる未来
姫路市立豊富小中学校6年 野中 麻央 時を越えて

▽中学生

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 賢明女子学院中学校2年 中本 日和 デジタル化が進む中で思うこと
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
明石市立高丘中学校2年 力 拓朗 助け合える世界へ
愛徳学園中学校3年 有賀 木香 私の将来の「主夫」
入選
入選 高砂市立荒井中学校1年 森本 宝乃実 悲劇は繰り返さずに語り継ぐ
高砂市立松陽中学校1年 石井 心陽 試すべきもの
姫路市立広畑中学校1年 虎島 佑奈 トランスジェンダーのトイレ使用制限について
賢明女子学院中学校2年 柳原 綾乃 無敵
加古川市立別府中学校3年 渡邉 春乃 生きろ

▽高校生

摺河学園賞
学校名・学年 受賞者 タイトル
摺河学園賞 灘高等学校1年 藤岡 優音 現実を知り、向き合う
優秀賞・販売店会賞
優秀賞・
販売店会賞
灘高等学校1年 鈴木 海聖 価値観って何だろう?
白陵高等学校2年 澤田 聖乃 自分だけが持つ美しさ
入選
入選 灘高等学校1年 岩田 崇史 正しい知識でお金に立ち向かう
光の子どもクリスチャンスクール1年 木下 幸 英雄たちの「当たり前」
神戸市立青陽灘高等支援学校2年 常峰 沙耶 平和な世界に
兵庫県立兵庫高等学校2年 小林 朋夏 平等と安心
兵庫県立兵庫高等学校2年 橋口 千聖 沖縄の涙を感じる

(敬称略)

学校参加校(129校)

▼小学校=62校

 神戸市=本庄、御影北、甲南、灘の浜、神戸海星女子学院、山の手、宮川、北五葉、泉台、淡河、若草、多井畑、神の谷、愛徳学園、舞多聞、つつじが丘、乙木、井吹東、井吹西、長坂、伊川谷、美賀多台、枝吉、北山▼西宮市=仁川学院▼宝塚市=関西学院、雲雀丘学園、小林聖心女子学院▼猪名川町=光の子どもクリスチャンスクール▼明石市=山手、花園、林▼加古川市=平岡、野口北、氷丘、東神吉▼高砂市=米田西、伊保南▼三木市=自由が丘東、広野▼小野市=小野▼加東市=東条学園、鴨川▼多可町=中町南▼姫路市=白鷺、野里、豊富▼たつの市=御津、揖保、小宅▼相生市=双葉▼太子町=斑鳩▼福崎町=田原、福崎▼市川町=瀬加、川辺▼神河町=寺前、神崎▼丹波市=大路▼豊岡市=日高▼洲本市=洲本第二、由良

▼中学校=44校

 神戸市=布引、神戸生田、湊翔楠、兵庫、岩岡、神戸山手女子、愛徳学園▼西宮市=関西学院▼宝塚市=雲雀丘学園、安倉、小林聖心女子学院▼尼崎市=南武庫之荘、園田学園▼猪名川町=光の子どもクリスチャンスクール▼明石市=高丘、野々池、魚住、二見▼加古川市=別府、志方▼高砂市=宝殿、荒井、松陽、鹿島▼稲美町=稲美北▼小野市=旭丘、小野、小野南▼西脇市=西脇南▼加東市=兵庫教育大学付属▼多可町=八千代、加美▼姫路市=大的、東光、賢明女子学院、書写、広畑、飾磨中部、香寺、神南▼上郡町=県立大学付属▼市川町=市川▼洲本市=蒼開▼淡路市=津名

▼高校=23校

 灘、青陽灘高等支援、神戸、神港橘、神戸山手女子、兵庫、長田、神戸甲北、神戸星城、北須磨、愛徳学園、伊川谷、芦屋、川西明峰、雲雀丘学園、光の子どもクリスチャンスクール、明石南、多可、賢明女子学院、姫路女学院、日ノ本学園、有馬(定時制)、津名

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