プログラム#3

神戸市立森林植物園

出演フルート:ザビエル・ラック、ギター:猪居亜美
撮影日:2023年10月25日

 第3作は、六甲山系の一部にあり、標高410~450メートルに約142ヘクタールの広大な敷地が広がる神戸市立森林植物園(同市北区山田町)が舞台です。
  撮影は10月25日。夏の猛暑から引き続き、例年より冷え込みが遅い秋に。園内は紅葉の見ごろには早く、色づき始めたところでしたが、赤、黄、緑のグラ―デーションがとても華やかでした。

 出演者は、神戸女学院大学(兵庫県西宮市)音楽学部准教授のザビエル・ラックさんと、クラシックギタリストながらロックの名曲アレンジも演奏する唯一無二の活躍を見せる気鋭、猪居亜美さん。ラックさんと猪居さんは2020年にCD収録で協演されています。 映像では、モミジバフウが植わる「シアトルの森」でピアソラ作曲「タンゴの歴史」の第1楽章を、ハナノキが赤く色づいた「長谷池」でイベール作曲「間奏曲」を披露します。前作までと同様にドローンでも撮影、秋晴れの空を飛びます。

出演者

ザビエル・ラック
ザビエル・ラック(Xavier・Luck)

 フルート奏者。オーストラリア・シドニー出身。英国国籍。大阪府泉大津市在住。メルボルン大学を卒業後、英国王立音大、ウィーン国立音大で研さんを積む。学生時代よりウィーン・フィルハーモニー管弦楽団及びウィーン国立歌劇場の契約奏者を長年務めた。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン交響楽団、ウィーン放送交響楽団、シドニー交響楽団、メルボルン交響楽団、京都市交響楽団、NHK交響楽団など、世界的オーケストラにゲスト首席奏者として招かれ、演奏会、レコーディングに参加。2006年にトーマス・クリスティアン・アンサンブルのメンバーとして録音のCDは、ドイツ・レコード産業最優秀賞を受賞。パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌をはじめ、チロル音楽祭、ザルツブルク音楽祭にも参加し好評を博す。05年、兵庫芸術文化センター管弦楽団(西宮市)の初代フルート奏者。08年からソウル・フィルハーモニー管弦楽団の副首席奏者を務めた。17年にファースト・アルバム「タファネル 至高のファンタジスト」、20年「エレメンタル フルートで探る精霊たちの世界」、21年「フルート・ソナタの旅」がリリースされ、「レコード芸術」誌で特選盤に選出される。13年より神戸女学院大学音楽学部准教授。

猪居亜美
猪居亜美(いのい・あみ)

 クラシックギタリスト。大阪市生まれ・在住。4歳から父、猪居信之氏に師事し、ギターを始める。6歳から勝間恵子氏にピアノ、ソルフェージュを師事。大阪音楽大学で藤井敬吾氏、福田進一氏に師事し、首席卒業および最優秀賞受賞。これまでにCD「Black Star」(2015年、フォンテック)、「Moonlight」(17年、同)、メジャーデビューアルバム「MEDUSA」(19年、キングレコード)を発表し、いずれもレコード芸術特選盤に選ばれている。現在は岩崎慎一氏、益田展行氏にも師事。テレビ、ラジオに出演するなど幅広く活躍し、21年にはPanasonicハイエンド4Kプロジェクター・業務用ディスプレイの高画質・高精細デモコンテンツ「Into the Harmony~新世代のクラシックギタリスト『猪居亜美』が奏でる世界~」に出演した。23年、米国で開催された「ギターラガンザ国際ギターフェスティバル」出演。雑誌「音楽の友」では「猪居亜美のGuitar‘s CROSS ROAD」を連載中。ユーチューブのチャンネル登録者数は9万人を超える。猪居ギター教室神崎川校などで後進の指導にもあたる。
オフィシャルウェブサイトhttps://www.ami-inoi.com/

曲目

2人の演奏風景

A.ピアソラ:「タンゴの歴史」から第1楽章「Bordel(売春宿)1900」

 アストル・ピアソラ(1921~1992年)作曲。
 ピアソラは20世紀の南米・アルゼンチンを代表する作曲家です。19世紀後期に首都ブエノスアイレス近郊の貧民から生まれた民俗音楽タンゴを、芸術の領域へと高めました。「タンゴの歴史」はフルートとギターのために書かれた曲で、全4楽章から成ります。映像で披露された第1楽章「売春宿1900」は売春婦が男性を誘惑する様子とか。今回の撮影地の自然風景からはかけ離れたイメージですが、陽気な曲想は森の中で聞いていると、フルートの音色が小鳥のさえずりに聞こえ、木々の根元からリスが跳ねてくるようです。

2人の演奏風景

J.イベール:間奏曲

 ジャック・イベール(1890~1962年)作曲。
 イベールはフランスで活動した作曲家ですが、海軍士官として第1次世界大戦に従軍したほか、イタリアにも留学しました。「間奏曲」は1935年に書かれた作品。冒頭、激しい旋律で始まりますが、別世界にいざなわれるような猪居さんのギターの音色に続き、大空を羽ばたいていくように、フルートの伸びやかな旋律が現れます。ラックさんの音色にはぬくもりがあり、終盤のソロは日本の尺八のようにも聞こえます。 池の上空を浮遊するようなドローンの空撮映像とともにお聞き下さい♪

ロケ地

神戸市立森林植物園
長谷池

神戸市立森林植物園(同市北区山田町)

 ■シアトルの森
 神戸市立森林植物園は、日本で唯一「森林」をテーマにした植物園。広大な園内には樹種ごとに林や森のゾーンに分かれ、秋には38種約3000本の樹木が紅葉します。
今回、ピアソラの「タンゴの歴史」を撮影したのは「シアトルの森」。園内にある「国際親善の森」の一つで、神戸市と米国・シアトルとの姉妹都市提携15周年を記念して1972年から整備されました。アメリカ原産のモミジバフウ約30本が広場を囲むように植わり、撮影日には鮮やかな赤や黄に色づき始め、緑と合わさって美しいグラデーションを描いていました。木陰にはテーブルやイスが設けられ、木漏れ日を浴びながらランチを楽しめます。開放感があり、とても気持ちがいい場所です。

長谷池
長谷池

 ■長谷池
 イベールの「間奏曲」を撮影したのは、園内の中心地にある水辺「長谷池」。映像では池にせり出した橋の上で、ラックさんと猪居さんが演奏しています。夏には水面一面に白やピンクのスイレン、黄のアサザとコウホネが咲きますが、秋の紅葉シーズン前には、水面に逆さ紅葉が映り込むように、作業員による手作業で根元を残して取り除かれます。撮影日の10月25日は除去作業が終わった直後。紅葉の見ごろにはまだ早かったですが、カエデの仲間「ハナノキ」は他の樹種に先駆けて赤く染まり始め、ラクウショウの黄葉もきれいでした。最盛期には池周りが赤やオレンジ、黄に染まり、圧巻の美しさです。