転機 それから
商売人が踏ん張らないと

谷 文彦さん (51)
鮮魚・飲食店経営/西宮市

▼ 記事を読む ▼
転機 それから
商売人が踏ん張らないと

谷 文彦さん (51)
鮮魚・飲食店経営/西宮市

 昨年、20年以上続けたブティックを衣替えし、魚屋兼居酒屋にしました。二つの震災があって、多くの人と関わっていくうちに自然とそうなったんです。
 阪神・淡路大震災の時、店へ向かう途中で見たのは、遺体にすがって泣く人や「消防車を」と叫ぶ人たちでした。私の店は無事でしたが、周囲の店が全壊。ここで続けるのは無理かなと考えていた時、父に「商売人が逃げるな。店がなくなったったら町は復活できん」と言われ、この地で頑張ってきました。
 魚と縁ができたのは東日本大震災です。お客さんに呼びかけて日用品などを集め、宮城県南三陸町の鮮魚店に送りました。その店は、避難所などに物資を届けていました。
 しばらくすると、お礼の魚が大量に届きました。タダでは悪いので共同購入を始め、それが商売に発展しました。東北の産品を売ることが支援につながる。鮮魚店の社長は「僕らが出て行くと、ゴーストタウンになるから」と南三陸で踏ん張っています。20年前の自分と重なるんです。
 居酒屋を併設したのは、人がふれ合う場所になればという思いもあったから。父の言葉を胸に、ここで商売をして、東北支援を続けます。(山崎 竜)


2014年7月22日掲載
写真撮影場所:

神戸市灘区水道筋6、「さかな屋 セルフィッシュ」